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オムレツの香りと絆創膏



大学の進学が決まってから実家を出てきて3ヶ月。そろそろ学生たちは夏服になるようなそんな季節だった。
引っ越してきたときに一応挨拶に行った隣の家で出会った小柄な中学生。彼の両親は仕事でほとんど家にいないらしくて、挨拶行ったときもチビだけが出てきたっけな。
それから朝会っておはよう、と交わしあったり、帰り道にばったり会ったりしたら一緒に帰ったりしてた。チビからしたら俺は「隣に住んでるお兄さん」くらいの存在だろうか。

そんな生活に慣れてしまったからだろうか。チビが修学旅行行ってくるね、とか言って1日会えなかっただけでなんか、足りなかったり、3日連続で朝会ったりしてて、4日目会えなかったら1日そのことを引きずったり。
自分でも最初は気がつかなかったけど認めざるを得ない気持ちになってきて、あ、これ俺、惚れたな。って自覚したのが3週間前くらい。
まぁ、そんなこんなで大学生にもなって隣の部屋の住人に恋をした。




オムレツの香りと絆創膏




ピンポーンという訪問者が来た合図が鳴る。はいはい、どちらさま?1人呟きながらカップ麺を食べていた箸を置いて玄関に向かう。

「どちらさま?」

「ジュダルくん!」

あけておくれ、聞き慣れた声が聞こえる。紛れもない隣に住む、俺が今、こんな状況を見てほしくないと願っていた、アラジンがドアを叩いていた。

「おー、チビ、なんだよ?」

とりあえず入るか?そう言うと軽く頷いてくれたので招き入れる。食べ途中の昼食やら雑誌やらプリントやら。お世辞にもきれいとは言えない奥のリビングルームに案内する。

「・・・あんまり綺麗じゃないね、」

「うるせぇな、一人暮らししたらおまもこうなんぞ、」

もっと片付けておけば良かった、などとどうしようもない後悔をしながらコタツを挟んで座る。

「・・・カップ麺、好きなのかい?」

出来れば指摘されたくないところを指摘される。うっ、と一瞬言葉が詰まってしまうが何とか言葉を返す。

「作んのめんどくせーんだよ、おまえだってどうせ料理できねーだろ?」

箸を持ち直して、焦りを隠すように麺をすする。すると、チビはむっ、としてこちらを睨みつけ・・・てるつもりなのだろう。正直上目遣いにしか見えない。

「そんなことないよ、あ、じゃ、作ってあげようか。」

コタツをおしてよいしょっ、と立ち上がる。

「えっ、お、おい、何するんだよ、」

「なんか作ってあげるよ、僕、軽いおかずくらいなら作れるからね、」

台所はどこだい?そう言われる。こうなったら聞きそうにもないのでとりあえず案内する。・・・正直、食材らしい食材はあまり置いていない殺風景な台所は自分で見ても、酷い。

「ジュダルくんは、むこうで待ってて!」




そう言われて追い返されてしまう。・・・ここ俺の家なんだけど。アパートなので水道とか、その他の間取りは同じだと思うから大丈夫だとは思うけど。

なんだか落ち着かない。壁を挟んだ向こう側にはチビがいる。いや!そういう意味で落ち着かない訳ではなくて、ケガしないかなとか。そんなことを考えてカップ麺を食べ終えそうになったとき。ふと、卵の良い香りがした。

「できたよ!」

不意打ちの満面の笑みにどきっときてしまったなんてそんなはずはない。そんな皿あったか?と思うくらい久しく見てない皿をどこからか持ち出してきて、上に綺麗に盛り付けされているのはふわふわのオムレツとベーコンとアスパラの炒めものに、フルーツ。なんとも彩り豊に盛り付けてある。

「・・・おぉ」

おまえ、こんなに料理出来たんだな、そう言うとえへへ、と言いながらふにゃっと笑った。いちいち顔が熱くなる。

「食べてみてよ!」

はい、どーぞ、と皿が机に置かれた。とりあえず真っ先に目に入ったやわらかそうなオムレツを口にする。

「・・うま、」

ここのところずっとカップ麺とコンビニの弁当だったから、手作りの食事なんて久々で。感動した。

「これくらい、余裕で作れるよ!」

昔ね、教えてもらったんだ!そう言いながら家庭科でやった調理実習の話をジェスチャー付きでしている。笑った顔がやはりふわふわしてて、こっちまで嬉しい。
そこで、ふと気がついた。
両手の指先に巻いてある絆創膏に。
余裕だよ!なんて言う割には多いような気がするまだ新しい絆創膏を見て少しだけ、期待する。

「・・・練習したか?」

控えめに訪ねると一瞬ジェスチャーが止まって、顔を赤くした。

「そんなこと、してないよ!一回調理実習で、やっただけだよ、」

あたふたと手を動かす。すると俺の視線の先の、自分の手の絆創膏を見て、手をしたに下ろした。

「・・・えー、っと、」

真っ赤になってうつむいてしまっているチビ。ああ、なんか、本当に嬉しい。可愛い。少しだけ腰をあげて目の前の青い髪を撫でる。

「・・・ありがと、な、」

恥ずかしながらも言うと俯いていた顔をあげて、アラジンはにこっと微笑んだ。

「どういたしまして!」



オムレツの香りと絆創膏
(愛情こもった料理をありがとう)



15360ヒット、まるさんからのキリリクでした!素敵なネタありがとうございます!!なんか甘々すぎになってしまいましたね・・・ジュダルくんが優男すぎて自分でもびっくりしてます(笑)もっとこうしてほしい!とかありましたらいつでも言ってください!まるさんのみお持ち帰りご自由にどうぞ!書いていて楽しかったです!これからもぜひ、お越しくださいね!素敵なリクエストありがとうございました!





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