星が綺麗ですね |
だいぶ捏造してます
死ネタです。すみません!
「もし、俺が死んだら、賑やかに最期を看取ってくれよ、」
いつだっただろう。王がそんなことを言っていたから。
「止めてくださいよ、縁起でもない。死んでからのことは、死んでから考えてください。」
あなたが死ぬときはきっと私も一緒に死んでますから。
死ぬなんてそんなことあるはずがない。戦うことはこれからもたくさんあると思う。そのたびに死と直面していかなければならないことはわかっている。元暗殺者の私が言うのも何だけれどもやっぱりそんなことは考えたくない。それにそんな弱気でいたら本当に殺されてしまう。
だからこんな日が来るなんて思ってもいなかった。
白い服を身に纏って静かに清らかに眠っているのは他の誰でもない、生涯、一生あなたに尽くすと誓った私の主だった。ほら、いつまで寝てるんですか。早く起きて仕事してくださいよ。
声が出ない。驚き悲しむこともできない。涙さえも出ない。しかし、体だけはしっかりと、力強くこの地を踏みしめていた。
しばらくこの事実を受け止められなかった。嘘だ。シンが死ぬわけない。そんなはずはない。・・・じゃあ目の前で安らかに眠っているのは誰?おまえの主だろう。なんで?いつ?誰が?
脳裏に焼け付いて離れないシンとの幸せな記憶と脳からとめどなく流れる自問自答。シンの声。表情。戦ってる姿。はじめて私を拾ってくれたあの日の森の景色。全てが、膨大な映像が音声が言葉が、流れてくる。
・・・気持ち悪い。
吐いてしまおう。全部全部吐き出してしまおう。すみませんと断りを入れて席をたった。
数日後。その日はこれでもかというほどに太陽は張り切っていて、王の望むような式ができそうだ。シンドリア国を挙げて王の葬儀を行った。これからどうするのかはあとで決めればいい。王の遺言通りに賑やかに、盛大に、人が死んだとは思えないほどの明るく煌びやかな式になった。朝昼夕。ずっとずっと続いた式も終わりが近づいてくる。海岸を見ると太陽が休もうとしていた。沈むな。まだ、まだ仕事をしていろよ。太陽が沈んでしまったら本当に本当にシンが死んだことを認めてしまうような気がして、怖くて。お願いだから、もう少しだけ頑張ってくださいよ。
私のそんな願いも叶わずにシンドリアにも夜はやってきた。市民も王宮のものたちも明日に向けてもう眠った頃だろう。あれだけ賑やかだった宮殿の前は人一人いやしない。王の棺だけが夜の中で、私の唯一の目印だった。
夜は嫌いだ。暗くて、何かいそうで怖い。幼かった頃はいつも無理を言ってシンと同じベッドで寝ていた。そう、あの時シンはどれだけ自分が疲れていても一人で寝たくても必ず一緒に、私の手をとって寝てくれた。たしかあの日もこんなに空に星が散らばっていたんだ。
「ねぇ、シン、」
きこえますか。
私は、ジャーファルはいま、悲しいんです。
あなたは私を置いて先に旅立ってしまわれた。
「いつもいつもそうだったじゃないですか、」
私が追いつこうとしてもあなたはどこまででも先に行ってしまう。それが酷く悲しくて、怖くて。
「置いてかないでくださいよ、」
幼い頃の約束事はきっと忘れてしまわれたのでしょう。私がいつでもあなたをお守りしますと言ったとき。ほら、あの朝の海岸ですよ。あなたは一生そばにいろと言ったじゃないですか。
嗚呼。
そうだ。
あなたと約束を交わす時はいつもそう。はじめてあった時。はじめてシンドリアで過ごした夜。始め後輩がやってきたとき。そして、はじめて抱きしめられた時も。
「いつだって、星は輝いていましたね、」
私たちの、シンドリアの将来を導くように輝いていましたね。
頭上にひとつ。酷く小さな流星がひとつ。流れていく。棺の上にもひとつ。酷く澄んだ水滴がひとつ。落ちていく。
「ほら、見てください、シン」
結局終わってから気づくんだ。この想いにも。
「星が綺麗ですね、」
星が綺麗ですね
(あなたのことが好きでした)
星が綺麗ですね=あなたのことが好きでしたらしいです。
死ネタすみませんでした。もっと賑やかなシンジャが好きなんですがこの言葉が本当にきれいすぎてどうしても使いたくて・・・!