抱きしめてみたらいいのに |
抱きしめてみたらいいのに。
もうひとりの自分が呟く。
包み込んでしまえば、白を覆ってしまえば。俺に染まってしまえばいい。
「どうしたんだい?」
「なんも・・・」
なんなんだよこの気持ち。紅帝国でなら欲しいものはなんでも手に入れてきたし、多少荒いやり方でも気にしなかったのに。
壊したくない。崩したい。
失いたくない。荒々しくしたくない。丁寧にしたい。
はじめてだよこんな気持ち。
後ろの木にもたれかかって寝そうになっているチビを見る。俺と違う色のルフが周りをうれしそうに飛び回っていた。
頬に手を伸ばす。柔らかい。自分顔を近づけて、唇を重ね合う。おそらく起きてないだろう?早く俺のものにしたい。
「なんだよ、これ、」
誰に対してのどんな感情だろう。この淡い恋心に俺が気づくのはまだまだあとなのだけれども。
抱きしめてみたらいいのに
(どんな感情も捨ててしまえばいいのに)
アラジンちゃんは起きてます。
タイトルは確かに恋だったさまより。