大好きなあなたは何処へ? |
写真の中のあの人は柔らかく微笑んでいた。
まだ、幼げな笑顔を、あたたかな笑顔を振りまいて笑うあの人。
まだ、何も知らなかった。世界がこんなにも汚くて、冷たくて、薄汚いなんて知る必要もなかったのだから。
ある夜、私は彼に「おやすみなさい」と言った。彼はかわいい笑顔で言った。
「おやすみなさい、良い夢見れるといいですね。」
翌朝。皆を起こすために寝室へと向かう。昨日、一番最後に閉めた部屋。彼の部屋だ。ドアが開いている。
(早起き、ですかね?)
「失礼します。おはようございます?」
彼の、アラジンの姿はなかった。いや、あったのだけれども。
「・・・・・・」
いつものおはようっ!という明るい楽しい声はなかった。
淀んだ目。
まるで幼いときの自分を見ているかのように。暗く、すべてをこわし、ころし、無にするために生き、息吸ってそこに居る。
「どうかしましたか・・・?」
情けない。アラジンの何倍も生きているはずなのに。
目の前の少年に言葉すらかけられない。声が震える。
「僕ね、気がついたんだ。」
笑う少年。嗚呼。あなたはそんな唇が弧を描く笑い方なんてしませんよ。もっと明るく楽しそうに笑うじゃないですか。
「ルフは黒くあるべきだ、って」
ふと、アラジンの長い風に揺れる髪が黒く、見つめる瞳が赤いような気がした。
大好きなあなたは何処へ?
(黒く染まったのならば取り返して見せますよ)
ジュダアラ←ジャファが美味しいです。
暗いネタになりましたが、もっとギャグ的なのも書きたいです!