誰にも知られずひっそりと泣ける場所。
大声を出しても誰にも迷惑かけない場所。

そこは人一倍傷つきやすく、泣き虫な俺の秘密の場所だった。




●放課後のゲシュペンスト




「うぁあああああ!!!!俺の何がいけなかったって言うんだよぉおおお!!!」

埃臭い古い教室。
俺はそこで絶叫した。なんでかって?それ聞いちゃう?…要はアレだ。女の子に振られたからだ。
絶対脈アリだと思ってたんだ。だって、俺の事優しいね!って言ってくれたり、頑張ってね!って応援してくれたり…。

それで今日告白したら…


『…ごめんね?彼氏いるし、我妻くんはそういう風に見れないかな』


だってさ!!!!!!
なんなのもう!どういう事なのもう!!!
失恋は初めてじゃないけれど、何度経験しても慣れない。
辛いことや悲しいことがあった時、俺はこの旧校舎へやってくる。
ここは良い。新校舎からも離れてるし、誰も来ない。
だから大声で泣いても、喚いても…。誰にも迷惑かけない。

昔から傷つきやすく、何かあると涙が止まらなくなってしまうヘタレな自分にとってここは秘密の場所だ。
昔からそんな自分が嫌だった。だけど、変える努力をしなかった。…だから今も俺はヘタレのままだ。

「…嫌だ。グスッ…こんな俺を卒業したい。そして彼女が欲しい…。」

使われていない机に突っ伏して、独り言ちる。
この場所は、自分と向き合うために必要な場所だった。
でも、向き合ってるはずなのに
俺はいつまで経っても変わらない。変わらないどころか劣化してるんじゃないか。とすら思ってしまう。


しばらく、その状態で机に突っ伏していたら
ふわりといい香りが鼻腔を擽った。
桜の花のような、柔らかな香りだ。

俺は突っ伏していた顔を上げて、目を見開く。
そこには俺をじっと見つめる女の子の姿があったからだ。

「どうして、いつも泣いてるの?」

「ッ!?…ぃひぃいいいいいいいいやぁあ!!!?」

いきなり現れた女の子に、俺は絶叫してそのままガターーンと座っていた椅子ごと後ろに倒れ込んだ。


「いったぁ…って、誰!!!?びっくりするじゃんかぁ!!!」

俺は床に座ったままの状態で、小首を傾げ未だ俺を
見つめる女の子に叫んだ。
まさかここに人が来るなんて、いままでなかったのに!!!
そこでハッとする。その子がすごく可愛いことに…。

俺の良いところでもあり、悪い所でもあるであろうそれ。
つまり切り替えが早かった。

うちの制服を見に纏うその子は、白く透き通るような肌に、少しだけ色素の薄い栗色の髪の毛。
長い繊細なまつ毛に縁取られた、伏し目がちな瞳が俺を見ていた。
セミロングのそれがさらりと揺れる。

「驚かせて、ごめんね?」

その子は、目を細めて笑うとサラサラの髪の毛をそっと耳にかけた。

「あ、いや、その…。こっちこそごめんね。騒がしくて」

「大丈夫」

「お、驚いちゃった!!ここってさ、誰も来ないじゃんか!!」

「うん。君しか来ないよね。…ずっと知ってたよ。君がここでいつも泣いてるの」

「…え?」

カァーッと顔に熱が集中するのが分かった。
え?見られてたの!?今までの見られてた系なの!?
その事実に羞恥心が煽られて止まらない。
結構色んな独り言をここで叫んでいたから…それも全部聞かれていた。となると最早消えたいレベルだ。
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