我妻善逸。という男は、まぁ、一言で言うと臆病でやかましい男だ。
ことある事にビビるし泣くし、叫ぶし喚くし。
なんともまぁ、忙しく情緒不安定。
それと同時に…女好きだ。

臆病なくせに、女の事となると180度違うから
これまた面白い。

情緒不安定で、女好き。
こんな面白設定な男は、そうそういないと思う。

そんな我妻善逸を好きな私も、結構な物好きなんだなぁ…と

そんな事を思うわけだ。



●愛を振りまくひと


「女の子ってさぁ…。何であんないい匂いするんだろうねぇ」

「はーい」

「なんて言うのかな。香の匂いとかじゃなくて、こう、天然のいい香りっていうかさ」

「はいはーい」

「あ、もちろんなまえからもいい匂いするよ?結婚しよ!」

「ノリで求婚するのやめてくれる?斬るよ?」


善逸との合同任務の帰り道。近くにある藤の家紋の家で休息をとることになった私達は、その道中こんな会話をしながら歩いていた。
善逸の結婚しよ。は挨拶だ。世界には様々な種類の挨拶があるらしいが、それと一緒の類で、彼なりの挨拶なのだ。
私はそう思うようにしている。

好きな人からの求婚。両手を上げて喜ぶべき言葉。だがしかし、こいつの求婚に一々喜んでいては、身が持たない。

私は”くーる”な”れでぃ”なのだ。

甘露寺さんから教えて貰った外国の言葉でかっこよくキメてみたものの
実際心の中は、くーるなれでぃとはかけ離れている。
彼が他の女の子に求婚しているのを見れば、モヤモヤするし。
彼が他の女の子に話しかけているのを見れば、モヤモヤするし。
彼が他の女の子に贈り物してたりするのを見れば、モヤモヤするし。
なんか全てモヤモヤするし。

前言撤回。私はモヤモヤれでぃだ。

そんなくだらない事を悶々と考えていれば、善逸が覗き込むように視線を合わせてきて、思わずヒッ。と小さく声をもらしてしまう。

「…なまえはさ。好きな人とか、いるの?」

「…は?」

何を唐突に聞いてくるんだこいつは。
眉を下げ唇を少しだけ尖らせた、女子みたいな顔した善逸。
こいつ、女子か。と私は真顔になった。
そんな彼の質問に、あなたが好きです!結婚しよ!等と言えるはずもない。

それにこいつにはモヤモヤさせられっぱなしで、なんかムカつくし
ちょっと意地悪してやろうと思った。

「私の、好きな人?知りたいの?」

「…うん。知りたい」

「私の好きな人はねー……………………炭治郎だよ?」

ニッコリ微笑んで言ってやった。
すまない炭治郎。君に犠牲になってもらうことにした。
爽やかな長男の微笑みを浮かべる炭治郎に、心の中で謝罪した。

「…は、はぁ!?マジで言ってんの!?」

「マジだよ?だって、炭治郎ってさ…”善逸”と違って真面目だし、”善逸”と違ってうるさくないし、”善逸”と違って大人だし…。何より”善逸”と違って女好きじゃないし」

すっごく嫌味ったらしく言ってやれば、善逸はあんぐりと口を開けて固まった。
そんな善逸に釣られるようにして、私も歩みを止める。

「善逸は禰豆子と結婚するって言ってたよね?私は炭治郎と結婚するから…。あれ、そうなったら善逸が義理の弟?ややこしい事になるね!アハハッ!」

キラキラと輝くような満面の笑みで言ってやった。
どうせこの後、酷すぎじゃない!?とか言って喚くんだ。いつもそうだし。とたかを括っていれば…。

「……………ああ。そう。」

「へ?」

善逸のすごく冷たい声が私の鼓膜を揺らしたのだ。
prev next
back


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -