小説 | ナノ

部屋の隅。
簡易なベッドの中で、長い睫毛を伏せながら、バンダナの主…旋獄はぐっすり眠り込んでいた。
俺が留守の間でも眠れるように、俺はベッドの周りに旋獄の力を制御するための結界を張ってやる。
寝る時まで鎖ぐるぐる巻きじゃ、可哀想だからな。

「ごめんなー…また、食わせてやれなかったなー…」

起こさないように、そっと髪に触れる。
と言っても、旋獄は一度眠りにつくと、最低でも6時間は絶対に目を覚まさない。
いつから眠り始めたかは解らないが、この熟睡っぷりからして、しばらくは起きないだろう。
…こうして眺めていると、とても殺人鬼の塊には見えない。
すっげぇ無防備で、安心しきった顔で…


「…可愛い、よな…」






「てめェの夜這いグセ、見ててホント腹立つな」

不覚にも全身を強張らせ振り返ると、ユラちゃんがこっちを睨んで(?)いた。
…っておい、どうやってここまで動いた?
疑問を投げ掛ける前にユラちゃんが叫んだ。

「俺様が何も知らねぇと思ったら大間違いだぞバーカ!!知ってんだかんな、てめェが眠り込んでる旋獄サマに毎晩キスしてんの。旋獄サマには言ってねぇけどな」

気の抜けてしまった俺は、ベッドの端に腰を下ろして苦笑混じりの溜息をついた。

「はは…見られてたか…まいったな…」
「スカしてんじゃねぇぞコラ!!てめェ、前に一度俺様を旋獄サマに巻かせたままお構いなしにヤ「はいはいはい!!俺が悪かった」

ユラちゃんはそういう事を平気で口に出すんだから…
誰に聞かれてる訳でもないのに、俺は危ない所で思わずユラちゃんの発言を遮った。

「ったくよぉ…旋獄サマのお気持ちを考えて敢えて何も口出さねぇでやってるけどよ、俺様は認めねぇかんな!!」
「え…旋獄の気持ち?」

俺が聞き返した途端、ユラちゃんは動揺し始めた。

…何だよ、気になるじゃねぇか…




直接聞いてやるしかないってか。