小説 | ナノ

時計の針はもうすぐ頂点で重なろうとしている。
点けっぱなしのテレビの声も耳に入らず、炸羅は立ったり座ったりと落ち着けずに部屋をうろうろしていた。

「なんだよ、クリスマスは特別な日だって言ったの自分のくせに」

テレビに映るのは、街の煌びやかなイルミネーション、聞き慣れたクリスマスソング、そしてウザいほどに幸せそうな恋人たち。
ふと寂しさが込み上げ、炸羅はふるふると頭を振った。

寂しい?なんだよそれ。

自分の女々しい感情に舌打ちをする。

「もういい、先寝るっ」

テレビのリモコンを投げ捨て、炸羅は寝室へ向かった。

パチンと電気を付け、無駄に広い寝室を見渡す。
静まり返った部屋と冷えきったシーツで、妙な孤独感に襲われる。
ベッドに飛び込んでみたもののまったく寝付けず、ごろごろ何度も寝返りを打ちながら、炸羅は天井を見つめた。
頭に思い浮かぶのは、どうしたって彼のこと。
大きなダブルベッドは一人で寝るにはあまりにも広過ぎ、余計に寂しさを煽った。
右側の空間に、意味もなく手を伸ばす。

「…いつまで一人にさせんだよ、…ばかやろう…」