「それでは、お邪魔しました」 「今度は年末の年越しパーティーだな」 「寒いから風邪引かないようにね〜おやすみ!」 「おやすみ、またな」 帰りの夜道、炸羅は無言で鴉嵐の一歩後ろを歩いた。 「どうしたんですか?…なんて、聞かなくてもだいたい予想はつきますけどね」 「…」 「恥ずかしがらなくたっていいのに」 「だっ…誰が恥ずかしがってんだよ」 「期待してる?それとも、本当に嫌?」 鴉嵐の直球な質問に、炸羅は一瞬身動ぐ。 本気で困惑する炸羅の顔を見て、鴉嵐はふっと笑みを浮かべ、進行方向に身体を向けた。 「ちゃんと教えて下さいね、あなたが“本気で嫌がること”は、したくありませんから」 喉元まで出かけた言葉を飲み込み、鴉嵐の背中を見つめる。 そのまま一言も発しないまま少し開いた間を小走りで縮め、炸羅は鴉嵐の服の裾を掴んだ。 家に着いた途端電話のベルが鳴り響き、鴉嵐は受話器を取った。 聞こえてくる会話の内容に、炸羅の表情が一瞬曇る。 受話器を置いて数秒間を置き、鴉嵐はため息を吐いた。 「…仕事?」 「まったく、あれほど24日は無理だと伝えたのに。仕方ないのでちょっと出てきますね」 「え、ちょっ、」 「大丈夫、ちょっと店を手伝ってくるだけですから。すぐ戻りますよ」 「でっ、でも…」 「一人でお留守番、怖いですか」 「なッ!!!?」 鴉嵐の最後の(余計な)一言に、炸羅の意地っ張りスイッチが入る。 「んなわけあるかっ!!子供扱いすんな!できるっつーの留守番くらい!!」 「じゃあ、出かけても大丈夫ですね?」 「さっさと行けバカ!!」 強引に押し出した後、炸羅は肩で息をしながらドア越しに鴉嵐を睨んだ。 急に静まり返った家に、自分の呼吸の音だけがやけに響く。 「…あぁもう、くそっ…」 ← → |