ピピピッ、ピピピッ―…。





「37度8分…」





普段低体温の彼からは有り得ない体温。表示された数字を見て、ふぅと溜め息をつく私。当の本人は意識朦朧。





「どうしてこんなになるまで放っておいたんですか…」

「この忙しい時期に休むわけには…」




ゴホゴホ、と咳を交えた教授の言葉は余りにも痛々しいと言うか、真面目すぎると言うか…。





「だからって…、体壊してちゃ意味無いじゃないですか。私も居るんだから」





"少しくらい頼ってくれても良いんですよ?"そう言うと、フンと鼻をならしてグルリ寝返りを打った(風邪を引いても意地っ張りは健在か)。まぁ、予想していた態度に本日二回目の溜め息。取りあえずこの熱を見逃す訳にはいかないので、自信はないが、私が調合した緑色の風邪薬を教授の口元までズイッと進めた。





「…なんだこれは。スライムか」

「し、失礼な!ちゃんとした風邪薬ですっ!」

「薬なら我輩作った残りがあるだろう」

「残念ながら、先日マダムポンフリーに差し上げたので最後です。観念して飲んでください」





無理矢理グラスを持たせて、飲むよう促す。眉を寄せて暫く渋っていた教授だが、グラスと数分睨み合った末に目を固く瞑り一気に飲み干した。





「にがい」

「良薬口に苦しですよ」

「…お前、分量を間違えただろう」

「(ギクリ)仕方ないじゃないですか!調合は苦手なんです!」





やっぱりバレたか。ちょっと不機嫌度が増した教授。お叱りを受けるのは懲り懲りだ。そう思ってそっとベッドサイドがら退散しようと思った、刹那。

進行方向とは逆に引かれた腕。捕まれた箇所が、燃えるように熱い。





「お仕置きせねば、ならんな」





熱く囁かれた言葉は両の唇に吸い込まれた。





お口直し
(何すっ、げほごほ!苦!)
(分かったらもう少しましな薬を作るんだな)
(…風邪引いたら教授のせいですからね)
(馬鹿は風邪を引かないだろう)
(……っ!もう知りません!)





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