「めりーくりすまぁーす!!」





カシャンッ、グラスのぶつかる音が談話室に響いた。黄金色のしゅわしゅわシャンメリーをグビッと飲み干せば、大人な気分で更に気分高揚。今年は各寮でのパーティー!つまり、皆と朝まで騒ぎ放題!まさに最高のクリスマス!





「パーティー万歳!クリスマス最高!」

「ちょっとナマエ、はしゃぎすぎよ」

「まぁ良いじゃないか、年に一度のクリスマスなんだから」





そう言いながらちゃっかりリリーの腰に腕を回すジェームズ。ちょっと眉を潜めて、でも満更でもなさそうなリリー(くそっ、バカップルめ!)。そのまま二人は部屋に流れるワルツにのって、ダンススペースへと行ってしまった。





「いいなぁー…」

「あれ、ナマエも彼氏欲しいとか思ったりするの?」

「はぁ、なに言ってんだリーマス、こいつに限ってそれは無いだろ!色気より食い気の女だぞ?」





シリウスあとでシバく。自分だってさっきからチキンばっかり食べてるくせに!でも彼氏、恋人…か。なんだかくすぐったいような気恥ずかしいような。





「まぁ俺らは独り身同士で楽しもうぜ!」

「そ、そうだよね!三人で楽しもう!」

「あ、ごめん。僕は相手がいるから」

「「えっ!?」」





まさかあのリーマスが!
驚き固まる私たちを他所に、彼女の分であろうお菓子を持って、リーマスも人混みの中に消えていった。





「はぁ…、リーマスもか。仕方ない、二人で満喫し、」





あれ、居ない。
慌てて辺りを見回すと、数メートル先で、数人の女の子に囲まれてズルズルと強制連行されていくシリウスを見つけた。私に気付いたシリウスは魚みたいに口をぱくぱくさせて(多分、ごめんって言ってる)女の子の波の中へ…。


そして気が付けば、ダンススペースの外で、独り。


そう自覚した瞬間、ぷしゅーっ、一気に空気が抜ける感覚。目の前ではイルミネーションに包まれた世界で、わいわい、がやがや。暫くすると、テレビでも観ているかの様な錯覚に陥った。まるで別世界、だ。





「(…出よう)」





そっと、誰にも見つからないように寮を出た。寒い廊下は普段からは想像もつかないくらい静かで、少し安心する。窓を覗けば広がるのは白銀の世界。今にもサンタクロースがやって来そうだ。




「なんて…、サンタなんか居るわけないのに」

「何が居ないって?」





突然の声に驚いて振り向けば、そこにはスリザリンのスネイプが居た。彼は白い息を吐きながら私の隣に並ぶ。





「パーティーは?」

「ああ言うのは性に合わない」

「だよねー、スネイプがはしゃいでる姿なんて想像できないもん」

「…お前はどうなんだ」

「んー、最初は楽しかったんだけど…。何て言うか、負け組は居づらいというか」

「要するに過ごす相手が居ないんだな」

「…、うん」





その通り、なんだけど、ハッキリ言われると更に寂しくなった。ふわりはらり、綿みたいな雪がゆらゆらと揺れ落ちる。暫く黙ったままそれを目で追っていると、ごほん、態とらしい咳払いが聞こえた。





「なに?」

「いや、その、何だ。…過ごす相手なら居るじゃないか」

「え、」

「……僕なら、朝まで予定は空いている」




あぁサンタさん、居ないなんて言ってご免なさい。





サンタクロースがやって来る!(幸せを連れてやって来る)





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