家はあった。家族もあった。でも、それらはただあるだけ。ボクに帰るばしょ何てなかった。

おはよう、ただいま、おやすみなさい。

あいさつをしてみても、へんじは帰ってこない。父さんも母さんも目の前にいるのに、二人は自分のことばかり。まるでボクはとうめいにんげん。家でも外でも、とうめいにんげん。


でもそんなとき、家の近くにあった大木の下で、ナマエにであった。





「ねぇ、それおもしろい?」





みきに寄りかかって本を読んでいたボクに話しかけてきたのは、黒っぽいあたまの女の子。その子は、ふわり、まき上がるスカートをおさえつけて、となりにすわった。





「わたしナマエっていうの、君は?」

「…セブルス」

「そっか!じゃぁセブルス、あたしのお友だちになってよ」






きらり、輝いたえがおに、とくん、としんぞうが動いた。

その日から、このばしょは、ボクとナマエのひみつの遊びばになった。天気のいい日はきまってボクより先にナマエがいる。ボクがおどろいた顔をすると、ナマエは言うんだ。





お帰り
(僕の居場所をくれたのは)
(紛れもなく君でした)





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