満月光る夏の夜。
薄暗い談話室で僕と君と、二人きり。





「お前が眠れないなんて、珍しいな」

「いやー、うっかり昼寝しちゃって…」

「馬鹿か」





そう溜め息を吐くと、なまえは頭を掻きがら照れ笑いを浮かべる。その瞬間何故だか無性に抱き締めたい衝動に駆られた。が、僅に空いた二人の距離が邪魔をする。それに多分、彼女を抱き締めたって跳ね返されるだけだろう。

何故なら彼女は、無糖人間だから。





「ぶぇっくしっ!」

「おっさん嚔だな」

「煩い」

「寒いのか?」

「うん。ちょっとだけ」





夏間近と言えど、深夜は少し冷える。
これはチャンスとばかりに、距離を縮めた。肩と肩が触れあう距離。少しの沈黙。チラリ、なまえが僕の方を見た。





「…セブルス近すぎ。ちょっと離れて」





ほらな、やっぱり無糖人間だ。





彼女にデレなんて甘さは無い
(…このシュガーレスめ)
(は?)





0709>>>title:Aコース