「……みょうじ」

「どうかしました?」

「いや…、」





聞きたいことはある。だが、いざとなるとどうしても口が言うことを聞かない(実に情けない)。このまま流れに任せて曖昧にしてしまおうと沈黙していると、ギギッと席を立つ音がした。





「気になるじゃないですか、言ってください」

「……何でもない」

「嘘。絶対何かあったでしょ」





珍しく執拗に問い詰めるみょうじ。そんなみょうじの姿に、焦ったのか何なのかポロリと言葉がこぼれ出た。





「好きな男が居る、のか」





すると、みょうじは呆れたように小さくため息をついた後、"居ますよ"とハッキリ答えた。





「…どんな奴だ」

「根暗で陰険で全身真っ黒で、ちょっと、いやかなり意地悪で、どうしようもなく鈍感で不器用で、無駄に闇の魔術に詳しくて、魔法薬学が得意で人付き合いが下手で、だけど本当は優しくてとても勇敢で格好良い人です」





息継ぎなしで言い切ったみょうじは、満足げな顔で我輩を見下ろす。我輩は迫力に押されて只見つめ返すことしかできなかった。しかし、これ程までにみょうじに好かれているとは…、正直、相手が羨ましい。





「…で、結局の所、それは誰なんだ」





殴りたくなるほど鈍感





「はぁ!?」




いやいやいや、あれだけ言ったら普通分かるよね?

私が好きなのは紛れもなく貴方。目の前にいる貴方なの!





「教授…、取り合えず一発殴らせて下さい」

「!?」





0126>>>title:Aコース