「干イラクサはもう少し多い方が良いよ」




私がそう言うと、スリザリン生のパンジーは素直に干イラクサを足した。その辿々しい様子を眺めていると、まるで昔の自分を見ているようで何だかくすぐったい気持ちになる。





「粒が大きすぎる。もっと細かく砕きなさい」





教授も黒マントを翻しながら見回りをしていた。その姿だけなら普通に「良い先生」なんだけれど…。





「グレンジャー、君がこの"至極"簡単な調合でミスをするとは驚きですな。グリフィンドールもこの程度か…」





時々もれる嫌味が残念すぎます教授。


内心ため息を吐きながら見回りを再開する。ふとネビルの手元が目に入った。火に掛けたままの大鍋、手には山嵐の針ー…





「駄目っ!」





咄嗟にネビルの手を引いたが、もう遅かった。大鍋が捻れた錫の塊にかわり、教室が流れ出た薬の海に沈む。





「バカ者!大鍋を火から下ろさないうちに山嵐の針を入れたな」





そう怒鳴りながら魔法で薬を取り除く教授。ネビルは真っ赤なオデキが顔にまで広がってシクシクと泣いていた。





「大丈夫だから、泣かない泣かない」





ネビルを宥めながら、腫れ上がったオデキに優しく杖を這わせると、赤みが引き腫れも少し治まった。





「あくまで応急処置だから、あとは医務室で」





そう言って、シェーマスにネビルを任せ立ち上がると、チクリと痛みが走った。どうやら私も薬がかかってしまったらしい(あー、やっちゃった)。





「君、ポッター。針を入れてはいけないと何故言わなかった。彼が間違えば、自分の方がよく見えると考えたな?グリフィンドールはもう一点減点」





なっ、理不尽過ぎる!
此には私も口を開きかけたが、後が怖いので止めた。ハリーも物凄く嫌そうな顔をしていた。





この後、できあがった薬を各々提出し、授業は終了となった。





「(やっと終わった)」





予想以上に疲れが溜まり、自室のソファーに寝そべっている。すると、ガチャリといきなり扉が開いた。入ってきたのは勿論、教授。





「ちょっ、ノックぐらいしてくださいよ!」





慌てて起き上がり、乱れたローブを整える。すると、教授はスッと私の前に立ち素早くスラックスの裾を捲った。足首には、ネビルと同じ大きなオデキ。





「まだ治してなかったのか」





教授からの意外な言葉に一瞬思考が止まった。もしや心配してくれたのかな。意外に良い人!




「大丈夫ですよ、一応治癒魔法かけましたから」





"治癒系は得意なんです"と私が言うと、深い溜め息を返された。





「薬を塗っておけ。仕事に支障がでると困る」


「はい。あ、でも私薬持ってな「自分で調合しろ」」


「えっ、教授の棚にストック有「異論は認めん」」


「は、い…」





授業終了
(良い人なんて思った私が馬鹿でした)





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