「(ドキドキしてきた)」





嬉し恥ずかし入学式から一週間が経とうとしていた頃。遂に初授業の時がやって来た。教室に繋がる扉の向こうからは、生徒達の話し声が聞こえる。





時計の針が、授業開始を示した。





「教授!行き「バァァン!」」





"行きましょう!"と言い切る前に、教授は勢いよく扉を開け、大股で前へ進み出た。




「ちょ、待ってください!」





慌てて追いかけ、隣へ付く。あれだけ煩かった一年生は、教授の迫力に負け畏縮している。そんな子供たちの様子を教授が気にかける筈もなく、淡々と出席を取り始めた。





と、あるところでピタリ声がと止まった。不思議に思い横目で名簿を見ると、次の名前は―…、





ハリー・ポッター





「あぁ、さよう」





猫なで声が教室に響く。





「ハリー・ポッター。我らが新しいスターだ」





そう言った教授の視線の先には、丸眼鏡をかけた緑の目の男の子。





「(あの子がハリーか…、案外普通だなー)」





隣で始まった演説を聞き流しながら、好奇心丸出しで見つめているとバチッと目があってしまった。内心焦りつつも、取りあえず微笑むとハリーもにっこりと笑ってくれた(良い子だ!)。





「ポッター!」





完全に和みモードだった私の脳に、突然低い声が鋭く響き、思わず肩がビクつく。名前を呼ばれたハリーも吃驚した顔をしていた。





「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを加えると何になる」





いやいや、一年生にその質問は難しいでしょ!あ、でも隣の子が手挙げてる(たしかハーマイオニーだったかな?)。賢い子なんだな。





「わかりません」





教授の口角が微かに上がる。





「有名なだけではどうにもならんらしい―、ポッター、もう一つ聞こう」





あれ、ハーマイオニーは無視ですか?





「ベゾアール石を見つけてこいと言われたら、何処を探すかね?」

「…わかりません」





ほら!教授!ハーマイオニーがまた手を挙げてますよ!





「モンクスフードとウルフスベーンの違いは?」





また無視!?いい加減ハーマイオニーが可哀想ですよ教授。





「わかりません」





だからハーマイオニーを当ててあげて下さいっ!





私の心の叫びも虚しく(助手の手前余計なことは言えないし)ハーマイオニーは結局無視された。





「…今のを全部説明したまえ」

「え、あぁ…、はい」





てっきり私の出る幕は無いだろうと思っていたが、予想外に当てられた。一呼吸置き、落ち着いて頭から知識を絞り出す。





「アスフォデルとニガヨモギは強力な眠り薬になり、別名『生ける屍の水薬』。ベゾアール石は山羊の胃から取り出します。用途は解毒剤です。モンクスフードとウルフスベーンは同じ物で、別名『アコナイト』とも言いますが、鳥兜のことです」

「…よろしい。諸君、なぜ今のをノートに書き取らんのだ」





ガサガサと一斉に羊皮紙を取り出す音がした。すると、教授がまた口を開く。





「ポッターの無礼な態度で、グリフィンドールは1点減点」





あ―、何だかどっと疲れた。





初授業
(次は調合を行う)




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