「本当に申し訳ありませんでしたぁぁっ!」





教授が帰ってきた瞬間、人生で初めての土下座を試みた。こってりと油を絞られる前に少しでも怒りを軽減しようと思ってしたことだが、予想に反して、教授は私を華麗にスルーした。そのまま使い古されたソファーに深く腰かけ、こめかみを押さえてため息を吐いている。何故だろう、様子がおかしい。





「あの…、教授」

「何だ」

「お、怒らないんですか?」

「…ほぅ、そんなに我輩に叱って欲しいのか」

「スミマセン、シツゲンデシタ」





どうやら土下座はお気に召さなかったらしく(ジャパニーズ最大の謝り方なのに!)余計に教授の機嫌を損ねてしまったらしい。
かといって、床といつまでとにらめっこしている訳には行かない。ゆっくりと起き上がり教授の方を見た刹那、目を疑った。

投げ出された黒い足はベットリと赤黒く汚れていたのだ!





「ちょっ、どうしたんですかその足!」





慌てて駆け寄ると、教授は直ぐ様足を引っ込めて近寄るなと言わんばかりの表情。しかし、足からはまだ僅かに血が流れ出ている。




「何でもない」

「診せてください」

「…もう薬は塗った。放っておけば直に―つっ」





痛みが走ったのか、表情こそ変わらないものの、教授はグッと拳を握り締め、足は痛みに震えていた。しかしそれでも傷を見せてくれる気配はない。…これはもう、力ずくでやるしかない!





「教授!失礼します!」

「なっ!触るな!貴様何をする―っやめっ」






***―…

「ん、此でよし」





30分の格闘の末、何とか教授を押さえ込む事に成功し、傷も魔法で大分癒えた。まだ歩くには支障があるものの、もう酷く疼くことはないだろう(多分ね、多分)。





「終わりましたよ」

「……」





私に押さえ込まれたのが相当嫌だったのか、もう痛みは無い筈なのに、ちらっと見上げた教授はまだ顰めっ面。私的には親切心でした事なのに、何故だか罪悪感で一杯なのは何故だろう。あれ、おかしいな、目から汁が…。





「…何故、ハロウィーンを抜け出して女子トイレなどに居た」





唐突上から降ってきた低い声にドキリ。ああ、遂に始まった。スネイプ教授の尋問。捲り上げた教授のスラックスを戻し、少し離れて正座。深く深呼吸をして、あったことを全て話した。





「…ほう。するとお前はいい歳の魔法使いだと言うのにトロールに腰を抜かし、あまつさえあのハリーポッター達に助けられたのか」

「はい。仰る通りで御座います…」

「はっ、スリザリン官僚の助手ともあろうものが…。情けない」

「ごもっともです…」





怖くて顔が上げられない。自分でも情けないとは思っていたが、こう他の人(しかも教授)に言われてしまうと余計に心にグサグサと刺さる。ホグワーツに来てから怒られてばかりなのは気のせい?





「…こうなれば、教えておくべきか」

「な、何を、ですか」





下を向いたままの私の顔に、教授の物であろう手が宛がわれた。そのまま、指で骨をなぞり、顎を捕まれくいっと顔を上げさせられる。その先には、先程までの顰めっ面とは打って変わって、微かに口角を上げ怪しい笑みを浮かべた教授が居た。





「教、授?」

「知りたいか、ホグワーツの秘密を」








さぁ、教えてあげよう
(…どうでも良いですけど、近いです教授)





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