「トリック・オア・トリート!」





そこら中でこの言葉が響くこの日。すっかり体力の戻った私は、子供たちにお菓子を配るのに大忙しだった。





「はいはーい!ハッピーハロウィーン!」





そう言いながら杖でヒョイヒョイッと授業終わりの生徒達のポケットにお菓子を忍ばせていく(此が結構楽しい)。人と人との間をすり抜けながら進んで行くと、少し背の低いフワフワ栗毛が目についた。





「あ、ハーマイオニー!」





名前を呼びながらフワフワ栗毛に駆け寄ってお菓子をポケットに詰めると、突然のことに驚いたのか、ビクリ肩を跳ねさせハーマイオニーはその場に立ち止まった。





「ハッピーハロウィーン!」





今日何度目か分からないこの言葉を言っても、ハーマイオニーは下を向いて立ち止まったまま。何だか様子がおかしい。ソロリと俯いたままの顔を除き込むと、すかさず本で顔を隠し、そのまま人混みへと消えていってしまった。一瞬見えた茶色の瞳には、光る滴。





「泣い、てた…?」





―…だとしたら、私はなんて不謹慎なことを!うわー、どうしよう…。





「悪いことしちゃったな…」





その後、全ての授業が終わり夕食の時間になってもハーマイオニーを見かけることはなかった。今夜の豪華な飾り付けと食事は最高で、いつもの私なら夢中になって食事を楽しむ所だけれど、今夜ばかりは箸が進まない。





「…すみません教授、先に戻ります」





ろくに手をつけず席を後にした私を見て、教授は一瞬怪訝そうな顔をしたが特に引き留めもしなかった。皆の邪魔にならないように、抜き足差し足で出口まで行き、ゆっくりと扉を閉める。さて、ハロウィーンパーティーはもうお仕舞い。





「探しにいきますか…!」








ハーマイオニー捜索隊
(隊員は一名、いざ出発!)










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