「で、マルフォイに騙されてこうなったと…」





華麗なヘッドスライディングで負った傷を魔法で治しながらそう言うと、4人一緒に肩を落とし、小さく頷いた。





「…もう駄目よ。外でフィルチがピーブズと話してる。じきに見つかるわ」





ハーマイオニーの言葉で更に沈み込む4人。流石に可哀想になって、そっと耳を澄まし、外の様子を伺う。微かにフィルチさんの声が耳に届いた。





「どっちに行った?早く言え、ピーブズ」
「『どうぞ』と言いな」

「ゴチャゴチャ言うな。さぁ連中はどっちに行った?」

「どうぞと言わないなーら、なーんにも言わないよ」






ケラケラと馬鹿にした様に喋るピーブズ。表情は見えないものの、フィルチさんか苛々しているのが何となくわかった。





「しかたがない――どうぞ」

「なーんにも!!言っただろ?『どうぞ』といわなけりゃ『なーんにも』言わないって!はっはのはーだ!」





うわ、ウザっ。
ピーブズが消える音と、フィルチさんの怒鳴り声が耳を駆け抜けた。うん、気持ちはわかるよフィルチさん。





「―…もうオーケーだ。」



いつの間にか隣にいたハリーが呟くと、皆安堵の表情を浮かべた。此で私も一安心。さぁ帰ろうとドアに手をかけたとき、ネビルがハリーの袖をグイッと引っ張った。





「え、何?」





ハリーが振り返るのにつられて、私も後ろを向く。そして、見てしまった。





「なっ、なに…これ」





一つの体に頭が三つ。血走った三組の怪しい目。牙の間からダラダラと垂れる涎…。超巨大な犬が、そこに居た。鋭い六つの目が、私たちをじっとりと見据えている。





「グァァアァァヴ!!」

「「「ぎゃぁぁぁ!」」」





大音量で響き渡った鳴き声を合図に、バタバタと脱出していくハリー達。私はというと…。





「(や、やばい…!腰抜けた!)」





あっという間に一人にされ、踏ん張ろうにも力が入らない。迫る牙。近くなる獣臭。生々しい鼻息。





あぁ、私死ぬんだ。





まだ授業一回しか出てないのに。レポートも書き終わってないな。教授に怒られる。私の人生、呆気なかったな―…。





さよなら、みんな。








神様、出来れば天国でお願いします。











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