「はぁ、何で私が見回りなんか…」





事の発端は数十分前―…








課題のレポートを執筆中、またノックも無しに教授が入ってきたかと思えば、ずいっと古くさい地図を差し出された。





「…なんですか」

「地図だ」

「いや、それは解りますけど…此をどうしろと?」

「この地図に書いてある場所を我輩の代わりに見回りに行って頂きたい。生憎今は手が放せないのでな」





私だってレポート書いてるんですけど!
と反論したい気持ちを何とか押さえ、言われた通りに見回りに行き、冒頭に至るわけである。








「それにしても、夜の学校ってやっぱり不気味…」





異様なほど静まり返った薄暗い廊下は、昼間と全く違った雰囲気で、動く絵画やゴースト達が怖くて堪らなかった。





「(早く終わらせて帰ろう)えーと、次の教室は…」





そう思ってポケットから地図を出したその時―





「生徒がベッドから抜け出した!――妖精の魔法教室の廊下にいるぞ!」





突然誰かの叫び声が聞こえた。急いで地図を見渡すと、妖精の魔法教室はここから少し戻った所だった。





「行かなきゃ駄目、だよね」





生徒を捕まえるのは気が引けるが、教授の代理としてほおっておく訳にはいかない。ふぅ、とため息を一つ吐いて、走り出そうとした瞬間、ビュンッと4つの黒い塊が私の隣をすり抜けた。





「なっ―!」





チラリと見えたネクタイは、真紅と黄金。




「待ちなさい!」





慌てて向きを変え、全速力で追いかける。たが、日頃の運動不足が祟ってものの数秒で息が上がってきた。






「(もう、無理…!死ぬっ!)」





脇腹が痛みだし一瞬諦めかけたが、暗闇のなかでウヨウヨと動く茶色い頭が微かに見えた。どうやらこの先は行き止まりらしい。





「(よっしゃ!追い付く!)」





最後の力でスピードを上げ、壁に向かって手を伸ばした、が





壁 が な い ?





「うそー!!?」





一度走り出したものは、簡単には止まれないわけで。目標である生徒達の横をすり抜け、突然できた空間に頭から突っ込み、生まれて初めてヘッドスライディングを経験した。





「(…もう嫌だ)」





壁だと思ったら扉でした
(うわっ先生!?)
(げ、スネイプの助手)
(ちょっと静かにしてよ!)
(フィルチに見つかっちゃうよ)












0509>>>
一旦切ります。