「キヤッ!」





ボーッと携帯を見ながら歩いていたら、大きな何かにぶつかった。私としたことが、いつの間にか人通りが多い所に出てしまったようだ。反省反省。





「すみません、ボーッとしてて」





そう言いながら顔を上げると、其処には真っ黒な塊。いや、全身黒ずくめの男が立っていた。しかも、顔立ちからして外国人。




「(ま、まずい…!)」





さっきの余裕は何処へやら。生粋の日本人の私は一気に緊張してきた。





「アアアイムソーリー…」





拙い英語で謝るが、男性は無反応のまま、暗い瞳でじっと私の眼を見つめている。ヤバイ、何か変な汗が出てきた。動悸か止まらない。





「…Walk to see the front」

「へ?」





無機質な声色でそう言いながら、その男性は私の隣をスルリ通り過ぎて行く。





急いで後ろを振り向くが、既に男性の姿はなく、体の芯に響くような低く甘い声だけが耳に残った。





Few two people who should originally meet
(出会った瞬間)
(運命が狂い出す。)





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