「ドラコ、」





不意に聞こえた声に顔を上げると、何者かに勢い良く抱きつかれた。一瞬頭が真っ白になったが、ふわり香った匂いと髪の色で、直ぐにナマエだと分かった。





「ナマエ…?」





名前を呼んでみても反応はなく、只取り敢えず背中に手を回してみると、僕の鎖骨辺りに生暖かいものがつたった。





「…泣いてるのか?」





そう聞けば、ナマエはコクンと頷き、声を上げて泣き出した。慌てて宥めるが泣き止む気配はない。

こんな風に泣かれたのは初めてで、僕には彼女を泣き止ます術は浮かばなかった。どうしたものかと頭を抱えていると、少し落ち着いたのか、ナマエは深く深呼吸をしてゆっくりと口を開いた。





「夢、見たの」

「ゆめ?」

「ドラコが、死ん…じゃう、ゆめ。すごくリアルで、ほんとに怖くてっ―」





ごめんなさい、と、最後の方はまた泣きそうになりながらそう言った。僕は何故か胸が一杯になって何も言ってやれなかった。そのかわりに、また泣き出した彼女を先程よりも強く抱き締めた。





「…私を、置いて逝かないいで」

「あぁ」

「ずっと、一緒にいて」

「―…あぁ、勿論だ」





With you, I will go forever
(決して)
(ひとりにはしない)





1229>>>title:[Hiver]