何時ものように自室でレポートの採点をしていると、コンコンっと小さなノックが聞こえた。





「ナマエです」

「…入りたまえ」





ゆっくりと、両手に花束を抱えた助手のナマエが入ってきた。此方を向いてはにかむ目は微かに赤く腫れてる。





「私、今日で最後なんです」





ナマエは掠れた声でそう言い、我輩の目の前まで近付いて来た。甘い花の香りが鼻を擽る。





「なのに教授ったら、全然来てくれないんだもん」




そう言って苦笑いを浮かべる。
あぁ、しまった。今日は彼女の送別会だったか。仕事に熱中しすぎて忘れていた。





「まぁ、別に良いですけど…、ちょっと酷いですよ?」





返す言葉がない。どうしたものかと悩んでいると、近かったナマエの顔が更に近くなった。微かに鼻が触れる。





「…キス、してくれたら許してあげます」





彼女はそう意地悪く笑い、我輩に有無を言わす暇もなく唇を重ねた。





To you who leave I
(何かを残してやれたのだろうか)





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