「野田、あーん」 「だっ、誰がするかそんな事…!」 校長室のソファーに座った音無と野田が、ひたすらにイチャついている。 現在の状況はと言うと、音無がどこからか持ってきた一口サイズのカステラを野田に食えと言わんばかりに差し出してるところだ。 俺からすれば別にそれ自体は構わない。 この二人はもはや戦線メンバー公認だし、こうして仲がいい事も非常にいい事だ。 付き合い始めた当初は喧嘩しまくってたけど。 とにもかくにも、俺はイチャつく事自体に問題があると言ってるわけではない。 問題は―――― 「食べたいだろ、ほら、あーん」 「ぅ…あ、あーん…」 「あのー、二人とも、そういうのは部屋でしてくれないかしら…私としては嬉しいのだけれど今はオペレーションの発表してるところって事を忘れないでくれる?」 二人が校長室で、しかも戦線メンバー達の前でイチャイチャしてる、という事。 野田の珍しい姿が見れるとはいえ、こればかりはみんなため息だ。 まぁゆりっぺの後半のセリフは聞かなかった事にして、俺は二人の世界に入っている音無の肩をつつく。 「おい、音無、聞いてるか?」 「…ん?なんだ日向?」 振り向いた音無だったが、まったく聞いてなかったらしい。 野田はカステラをもぐもぐ食べてるし。 これには周りの戦線メンバーもため息をついた。 「お前…、今何してるかわかってるか?」 「?オペレーションの話だろ?」 「いやそうなんだけどさ…」 対応に困っていると、ゆりっぺがしょうがないわね、とこちらまで寄ってくる。 「音無くん、野田くん、二人は今日のオペレーションに参加しなくていいわ」 「え…い、いいのか?」 「な、なんだと?ゆりっぺ!俺はやるぞ!」 野田がその言葉に我に帰ったかのように反論する。 が、ゆりっぺは二人の手を掴むと、校長室のドアまで半ば引き摺るように連れていった。 「あんたたちは部屋でイチャイチャしてなさい!今回のオペレーションは大きなものじゃないし大丈夫だから!…というかはっきり言って邪魔よっ」 うわ、ゆりっぺ本当にはっきり言ったな。 野田がぽかんと現状の把握をするのに頑張っている間に、ゆりっぺが校長室から二人を押し出す。 「じゃあね!」 バタン。 驚く二人をよそに、ドアが閉まった。 * 「野田ー、機嫌治せって」 「…だって、ゆりっぺが俺の事を邪魔だと…」 そう言って目を伏せてしまう野田。 ああ、可愛い。 ちなみにここは俺の部屋で、現在ゆりっぺの発言に落ち込んでしまったらしい野田を慰めているところだ。 よしよしと頭を撫でて、額にキス。 「大丈夫、ゆりも本気で言ったわけじゃないし、冗談みたいなもんだよ」 「ほ、本当か…?」 「本当本当」 そう言ってやれば、野田はばっと顔を上げ、ほっとしたような顔をする。 わかりやすいし純情、そんなところもいいんだけど。 野田はゆりの事慕ってんだなぁ、と再確認しながらも、唇にキスしてやれば、野田は真っ赤になりながら自ら求めてくる。 「ん…っんん、ぅ…」 くちゅ、と唾液の混ざり合う音が部屋に響いた。 ゆりには感謝だな。 昼間から野田とこんなことできるんだし。 「っはぁ…」 だんだんと息が上がっていく野田を見ながら、こんなことになるならまた校長室でイチャついてもいいな、なんて考えた。 爪先まで全部 誰にも渡したくないなんて、 そのくらい俺は、君が大好きだよ |