日→←直。告白話。
二人共別人な気しかしない。







生徒会室へゆりっぺに頼まれた資料を探しに来たら、ソファーの上に寝ている直井を見つけた。

滅多に見たことのない寝顔をもっと近くで見てみたくて、少し近づいてみる。

「……可愛い」

すーすーと小さく聞こえる寝息。
普段はいつも怒ってるに等しい態度の直井だが、帽子を脱いで寝ている姿は子供っぽいあどけなさが残っていた。
不覚にも可愛いと思ってしまう。

気が付けば手が伸びていて、そのまま頭を撫でてみる。
うわ、髪めちゃくちゃさらさらだ。

いつも音無だけに懐いてるから絶対こんな事できないよな。

俺なんか愚民扱いだし。


「んぅ…」

触り心地のいい髪を撫でていたら、直井が小さく呻いた。

起きたか…?
一瞬手を引いたが、数秒後にはまた寝息を立てていた。

「直井」

もちろん返事が返ってくる事はない。
けど、呼んでみたかっただけだ。

再度顔を覗き込む。
不意に唇へ目がいった。
規則正しく息を繰り返す、形のいい唇から目が離せられない。

引き寄せられるように顔を近付けて。
唇が合わさると思った瞬間。


「ぅ…、?」
「あ」

俺にとって最悪のタイミングで目覚めた直井と、目が合った。
時計の秒針が妙に大きく聞こえて、やばいと思うのも束の間。

「な、何をしている貴様…!?」

まだ寝起きで現状を把握できないらしく、直井は戸惑った表情で俺を見上げてきた。
余計に顔が近くなり、視線が絡む。

「直井、」
「…っん!」

もうどうにでもなれと、そのまま目の前の直井に口付けてやった。

もう口も聞いてくんなくなるかもな…。
触れるだけのキスをして、直井から少し距離をとった。

…あれ?
絶対すぐ怒ると思ったのに、なかなか怒る声が聞こえない。
どうしたのかと思って直井の顔を見る、と。

「き…さま…っ」

その顔は真っ赤だった。
ばっと跳ね起きたかと思えば、睨まれる。

「…なんでそんなに赤くなってんの?」

素朴な疑問だった。
直井は音無の事が好きだろうと思っていたから、照れる必要なんてないはずなのに。
返事のない直井にまさかとは思いながら、聞いてみる。


「俺の事、好きとか?」

直井はまた返事をせず、ちらりと俺を見たかと思えば、俯いてそのまま黙ってしまった。

これって期待していいって事、だよな…?

柄にもなく心拍数が上がるのを感じながら、さっきとった少しの距離を縮める。

びくっと直井の肩が跳ねた。
そんな驚かなくても何もしないって。

「ひ、日向」

俺よりもかなり小さい華奢な体を抱きしめる。
直井が小さな声で俺を呼んだ。

「直井、好きだ」

言うつもりはなかったのだけれど、ここまできたら後には引けない。
こくりと、直井が息を飲む音が聞こえた。

「お前は?」


やっと返ってきた答えがどっちだったかは秘密。
ただゆりっぺに感謝しなきゃなと思った、とだけ言っておこう。

無意識のゼロセンチ

それが恋の、
始まりでした


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