無知で純情な野田との初体験話







告白したのは1ヶ月前。
その返事を貰って付き合い始めたのが2週間前。
キスを交わしたのが、1週間前。

そろそろ次に進みたい、そうは思うが野田が許してくれるか。

今、野田は俺の腕の中にいる。
ちなみに場所は部屋のベッドの上、だ。

「…野田」
「な、なんだ?」

まだ慣れないのか、体を固まらせてじっとしている野田。
後ろから抱き付くようにして肩に顔を埋めるようにする。

そうすればあたふたし出す様子が可愛くて、どんな顔してるかな、とこっちを向かせようとして顔を上げた。

「……」

目に最初に映ったのは、紫の髪と耳。
癖のある髪から耳が見えるのが可愛い。

決してそういう意味じゃないが、無性に悪戯したくなった。

目の前にある耳にかぷりと噛み付く。
びくん、と野田の体が震えた。

「んぁ…っ、お、音無…!!」

やめろ、とやはり抗議の声が聞こえたが、気にしない。
というかなんだ今の声。
いくらそういう意味じゃないってたって反則だろう、可愛すぎるだろ…!

そんな葛藤を脳内でしながら、野田の反応が気になって耳たぶを甘噛みした。


「ひや…っう!音無!」

さっきより強く名前を呼ばれ、しょうがなく耳から口を離した。

振り向いた野田は真っ赤で、瞳に涙を浮かべていた。
これは我慢しろと言われてもできない、よな。
いくら死後の世界だからって、性欲はあるのだ。
こんな可愛い恋人がいるのに、やらない方がおかしい。

というかもう限界。
意を決して聞く。


「なぁ野田、その、シていいか?」
「する…?何をだ?」
「え、そりゃセックス、だろ」
「せっくす…?何だそれは?」

一瞬時が止まった。
何だって、とぼけてるだけか?
いや、ぽかんと疑問符を浮かべている野田は可愛い、じゃなくて嘘ついてなさそうだし…。

マジで知らないのか!?
どこまで純情なんだよ…!
ツッコミを入れたいのは山々だが、まさかの「わかりません」宣言に俺が一番動揺していた。


「で、それは何なのだ?」
「……恋人が愛し合う為の行為…かな」

こんな説明をする日が来るとは考えもしなかった。
野田はふーん、と数秒考え、俺の方を見る。

「具体的にはどういうことだ?」
「あー、なんて説明するべきか…」

まさか知らないとは思ってなかったし。
というか具体的にって何をどう説明すりゃいいんだよ…

いや、こういうのは説明より実戦、だよな。


「野田」
「ぅあ…っ?」

そのまま、倒れ込むように野田を押し倒す。
驚いた顔で、見上げくる野田。

その顔は紛れもなく純粋で無垢、で。
だからこそ、征服欲が掻き立てられる。

「セックスはさ、説明するより体で覚えるもんなんだ」
「そう…なのか?」
「あぁ、だからその、させてくれるか?」

黙ってしまう。
野田からすれば未知の体験を内容も知らされずされようとしているのだから、怖さも少なからずあるだろう。

だから嫌なら、無理矢理やるつもりなんてない。
数秒の間があり、野田が躊躇いがちに、呟く。


「…音無が、したいなら」

返ってきた答えは、俺の理性を壊すには十分で。
ありがとうと言う代わりに、優しく口付けた。

唇から始まる

その行為は、
愛し合う恋人の証


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