花火が終わり、祭りが終わりを告げる。 さっきまでの賑わいや明るさが嘘のようで、まるで静かな夜に飲み込まれてしまったようだ。 何度経験しても祭りの後はどこか寂しいものだ。 お互いなんとなくすぐ帰る気にはならなくて、近くの公園へ立ち寄った。 さっき自販機で買ったジュースを片手に、ベンチに腰を下ろす。 「やっぱ涼しいな、じっとしてると」 「そうだな」 いくら夜とはいえ夏は夏だ。 歩いてる間は汗もかいていたのだが、こうしてじっとしていると夜風があたって気持ちいい。 外で涼むなんて滅多にしないことだったから、余計に涼しく感じた。 缶ジュースを開け、少し乾いた喉を潤す。 野田は空中をぼんやりと見つめていた。 「野田?」 「っ、な、なんだ?」 声をかけたらびくっと跳ねるもんだから、こっちが驚いてしまう。 「いや、ぼーっとしてたからさ」 「あぁ…別になんでもない」 なんか焦ってるみたいで何を考えていたのか気になる。 聞こうとしたら、野田は持っていたジュースをごくごくと飲み、立ち上がった。 「音無、帰るぞ」 「え?あ、あぁ」 はぐらかされた、とちょっと残念に思ったが、まぁいいか。 ジュースを飲み干し、同じように立ち上がる。 ゴミ箱に空き缶を捨て、公園を出た。 「じゃあ、またな」 言って歩きだそうとして、音無、と呼び止められる。 振り向くと、思ったより近くに野田がいた。 「なかなか…楽しかったぞ」 「あぁ、俺も。野田といれて楽しかったよ」 頭を撫でる。 辺りは真っ暗でもう人は歩いていないから、気にすることはない。 野田はもう眠いのか、猫みたいに目を細めて、それから。 「祭り、誘ってくれて、あ、ありがとう…、音無」 「の…っ、野田…!」 「ぉわっ!?」 離せと声が聞こえた気がしたが、気にせず抱き締める。 だって、今、あの野田が! 俺にありがとうって笑ったんだぞ!? 抱き締めずにはいられなかった。 可愛いっていうレベルじゃない。 普段絶対見れない笑顔―――というか恋人の俺でさえ数えるほどしか見たことがない―――を、こんな間近で見れたのだから。 突然にデレモードに入ってしまった野田を困惑しつつも強く抱き締める。 野田も諦めたのかおとなしくなった。 「…野田」 「ん、」 顔を上げたら視線が絡んで、今日は本当にどうしたのか、野田の方からキスをされた。 「んぅ…ん…っは、んん…」 積極的に舌を絡めてくる野田に外だという事も忘れて、長いキスをした。 無意識に体が熱くなる。 「っはぁ…」 唇が離れ、野田が溜まった唾液をこくりと飲み込む。 ゆっくりと体を離した。 「俺の家、泊まって行くか?」 「……、………うん」 どっちにしろ一人暮らしだし、俺は構わない。 聞けば頷いた野田と一緒に帰路へとついた。 夏の夜風 寂しい祭りの後も 君となら幸せだよ |