屋台の周りは、人がまばらになってきた。 どうやらそろそろ花火が始まるらしく、みんな花火が綺麗に見える場所まで移動しているらしい。 「野田、花火見に行こう」 「別に構わないが…」 俺が歩きだせば、野田は俺の隣に付いてくる。 数メートル進んだところで、野田に呼び止められた。 「む、音無、花火は向こうじゃないのか?」 俺がみんなとは違う方向に歩いてる事に気が付いたのか、野田は不思議そうに首を傾げた。 「あぁ、友達に聞いた場所があってさ」 「そうなのか…?」 友達っつっても日向だけどな。 あいつが恋人と行くならとっておきの場所があるぜ、と教えてくれた。 人通りが少なくなってきたため、手を繋ぎ、少し足早にその場所へと向かう。 パーン、と一発目の花火が打ち上がるのと同時に、開けた場所へ着いた。 そこには数人の先客がいたが、他のところよりは人が明らかに少なくやっぱりいいスポットみたいだ。 「間に合った…っ」 野田と同じタイミングで空を見上げる。 視界いっぱいの星空の中に打ち上げられる花火。 広がっては消え、広がっては消え。 その何とも形容できない幻想的な風景に目を奪われる。 「凄い…な」 「あぁ…」 野田の呟きに頷いて、一心に空を見つめた。 ちらっと周りを見ると、みんな俺達と同じように空を見つめている。 ぎゅ、と繋いだ手が握られる感覚に視線を野田に戻した。 「どうした?」 「いや…ただ握っていたいだけだ」 話を逸らすように花火を見る野田が愛しい。 野田はいつになったら自分の可愛さを自覚してくれるのか。 「野田」 「なんだ?」 こちらを見た野田に、周りも気にせず口付けた。 喧騒に紛れてキスをした (「こんなところで…っふ、ふざけるな貴様…!!」 「俺はふざけてなんかないぞ?」 「なぜそこで笑う!」 「野田が可愛すぎるからつい」) |