わいわいがやがや。
そんな言葉が似合う賑わう祭り。

しかし今年は去年より人が多いみたいで、どの道も人で溢れていた。
こういう人が多いところはあまり好きじゃない、のだが。

「次どこ行く?」

聞けば、隣にいる野田はそれは楽しそうに、かき氷、と返してくる。
うん、こんな可愛い野田を見れるのなら、多少人が多いのなんて気にしていられないよな。

人混みを掻き分けるように進んでいくと、かき氷の露店が見えてきた。
買ってきてやるよ、と声をかけようとして隣を見ると。

「野田…?」

いない。
まさかはぐれたとか?
今の数秒でか!?

とりあえず歩いてきた道を戻ってみる。
と、少し遠くに紫の頭を発見。

「野田ー!」
「ふっ、藤巻…っ」

やっと抜け出せたらしく、呼ぶとこちらに走ってきた。
ってなんで涙目なんだよお前。 


「お、置いてくな…!」
「ちゃんと付いてこいって」

そう言いながら、人の少ないところまで手を引いて連れていく。
泣きそうな顔をするもんだから、ぽんぽんと頭を撫でてやると一瞬安心したように目を細めたが、すぐ外だという事を思い出したのか、手を振り払って睨まれた。

「あ、そうだ野田」
「なんだ?」
「はぐれないように手繋ぐか」
「な…っ!?」

あんなたくさん人がいる場所でそんな事できるか!と怒られる覚悟で言ったのだが、よっぽど一人になったのが嫌だったのか、す、と俺の手に自分の手を伸ばしてきた。

「こ、これでいいだろう」

顔を赤くしてそっぽを向いた野田は、俺の浴衣の裾をきゅっと掴んだ。

か…可愛すぎんだろ!
叫びたくもなったが、なんとか自制して、あぁと頷く。
そうして、裾を握ったまま付いてくる野田を見ながら、歩き出した。

はぐれない方法

それはもっと近くに
離れず居ること


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