毎年恒例と言っていい程、夏の暑い季節に開かれる祭り。 昔大雨が降って一回中止になった事があったが、今日は昼間からずっと綺麗に晴れていた。 去年までは友人に誘われて行っていた祭りだったけど、今年は恋人と過ごす貴重な時間になった。 家で浴衣に着替え、祭りへ向かう。 恋人である野田は入り口で待っているとの事だった。 祭りまでの道は同じように浴衣を着た人がたくさん歩いていて、俺もそれに付いて行くように同じ方向へと歩いてゆく。 早く会いたいという思いからか、足が自然と早くなる。 やがて明るい場所が見えてきて、色々な人達の活気のある声が聞こえてきた。 待ち合わせには十分間に合った。 時計を確認しながら、野田の姿を探す。 「どこを探してるんだ、貴様は」 「野田!」 声に振り向けば、そこには黒い浴衣に身を包んだ、愛しい恋人の姿。 むすっとした顔で俺を見てくる。 「浴衣、似合うな」 「…ふん、当たり前だ」 見たことのない服装だからなんか新鮮だな。 野田を見ながらそう考えていると、今度は野田が俺の方をじっと見つめてきた。 「どうかしたか?」 「い、いや、その…、貴様も似合って、るぞ…」 段々と小さくなってゆく声。 あぁ、なんで野田はこうも可愛いのだろうか。 「ありがとう、野田」 「礼を言われる様な事など言ってない」 ぶつぶつと祭りの騒がしい音に掻き消されそうな小さな声。 「よし、じゃあ行くか」 「そうだな」 言って、二人で祭りの中へと足を踏み入れた。 楽しみはまだまだこれから。 煌めく世界ときみ (「野田、どこから回る?」 「貴様が行きたいところでいい」 「それが一番困るんだが…」) |