授業が終わり、NPC達は部活を始める。
俺はそんな姿を見送りながら、自販機でお気に入りのKeyコーヒーを買って、屋上へ向かった。


ギィ、と重い音をたてながら、扉を開く。

人はいない静かな屋上。
俺はよくここにいる。
風が吹いてるから涼しいし、NPC達の様子をぼーっと眺めてる事もあった。

コーヒーを飲みながら、少し考え事をしていると、後ろでドアが開く音がした。


「やはりここにいたか」
「…野田」

そこにはハルバードを片手に持ちこちらを見る野田の姿があった。
珍しく野田は自分から俺の方に寄ってくると、隣に立った。


「何をしてたんだ?」
「ちょっと、昔の、生きてた時の事思い出してた」

素直に答えると、野田は眉を寄せ、そうか、と呟く。
野田の生前はどんなものだったのだろうか。
少なくとも幸せではなかっただろう。

野田は自分の生前を思い出したのか、表情が曇っているのが見て取れた。
心なしか、ハルバードを持つ手に力がはいってるような、そんな気がする。


「野田」
「な、なんだ」
「無理にとは言わないけどさ、話す気になったら、聞かせてくれ」
「…あぁ」

少しでも力になれるならなってやりたい。
心の底からそう思う。
でも野田が自分から話してくれるまでは、聞くつもりはない。

これ以上深入りするのはよくないと、俺は話を切り替えた。



「もうこの話は終わりな、で、野田は何しに来たんだ?」
「特に何もない」

ふん、と目を逸らされる。
野田は理由もなく行動する奴じゃないと思ってたから、少し驚いてしまった。

呆けていると、そんなに意外か、と睨まれる。
って、なんで赤くなってるんだ?


「……に、…から」
「は?」

「…貴様に会いたくなったから」


…。
………。
あまりの事に、何も言えなくなった。


え、どうしたんだ。
今なんて言った?
会いたくなったから?あの野田が?

これはデレ期なのか。

自分で言って恥ずかしくなったのか俯いたままこちらを見ようとしない野田。
本当なんなんだこの可愛い生き物。

「お前、自分の可愛さわかって言ってるのか…?」

俯いたままの野田にそう言う。
わかってないんだろうな、きっと。

「可愛くなど…」
「可愛いよ」

否定しようとする声を遮って頭を撫でる。

「なぜ貴様はそんな恥ずかしい事を堂々言えるのだ…っ」

さっきよりさらに頬を赤くして、でも手は振り払わない。
触り心地のいい髪を何度も撫でながら、考えてみる。

「別に恥ずかしくないな、思った事言ってるだけだから」
「〜〜っ!それが恥ずかしいと言ってるんだ…っ」
「あっ、」

野田が俺から離れ、小走りにドアへと行ってしまう。
怒らせたのか…?
そうも思ったが、ちらっと見えた野田の顔は楽しそうだった。

「野田、待てって」
「待たんっ!」

そう吐き捨て本格的に走りだす野田。
それを追い掛けながら、楽しんでる自分がいて、自然と笑みが零れた。

あいたくてたまらない

そんな日だってある
だからもっと
側に居てください

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