転生パロ 最早捏造しかない。 チャイムが鳴り、終了を知らせる。 特に用事もなく部活もしていない俺は、家に帰るだけだ。 ここは、死んだ世界戦線から消えた後の世界。 俺にとっての二度目の人生だ。 ごく最近まで忘れていた記憶だったが、あることがきっかけで全部思い出せた。 そして、今は神に抗うこともなく、人並みの幸せを手に入れてると思う。 教科書は基本的に机に突っ込んだままだから、筆記用具と必需品のみが入った軽い鞄を手に引っかけ、教室から出る。 家までは10分程度だ。 中庭を歩き校門に向かっている途中、携帯が震えた。 名前も見ずに慌てて通話ボタンを押す。 「っもしもし」 『もしもし』 …この声は。 「音無か?」 『あぁ、今から会えないか?』 「む?別にいいが…」 『よし、んじゃ制服着替えたら駅前な』 「わかった…って音無なんで――」 切れた。 なんで今からなのか聞きたかったのだが。 実はと言うと音無と会うのは、再開したっきりだったりする。 メールや電話で話はしたが、改めて会うのは久しぶりである。 音無は医療関係の勉強をしているらしく、それなりに忙しいらしい。 そんな音無が会おうと言ったのだから、素直に従っておくか。 理由は少し気になったが、俺は家へと急いだ。 私服に着替え、駅前へ着く。 夕方になり始めた頃だったから、駅前はまだ人がたくさん行き来していた。 キョロキョロと辺りを見回す。 ―――まだ来てないのか? 連絡しようと携帯を開いた瞬間、後ろから肩を叩かれた。 「野田」 後ろを見れば、思った通り、にっこり笑う音無の姿。 なんだか無性に照れ臭くなって、顔を逸らした。 「久しぶりだな」 「あれ以来だったしな」 「で、今日は何故俺を呼んだのだ?」 「ん?そんなの決まってるだろ、というかお前、忘れてんのか?」 「……?」 今日は何かあったか? むむ、と悩んでいると音無が呆れていた。 「誕生日」 「…あ」 「おめでとう、野田」 そう、だった。 この歳になってからはいちいち祝わなくていい、と家族に言ったからか、自分で忘れてしまっていた。 音無は覚えててくれたのか。 くしゃりと頭を撫でられる。 面と向かっておめでとう、と言われると、反応しにくい。 でも、嬉しかった。 「あり…がとう」 「よし、じゃあ行くか」 「行くってどこにだ?」 「デート。ほら」 そう、手を差し伸べられる。 デート…デート? 数秒思考して顔が火照るのを感じながら、固まっていると、きゅ、と手を握られてしまった。 「まっ…音無っ」 「時間ないから急ぐぞ、野田」 手を惹かれるまま、俺は歩きだした。 あの後、電車に乗り込み、降りた先で色々な店を一緒に回ったり、プレゼントを貰ったりして。 自分でもびっくりするくらい楽しんでいた。 もう真っ暗になった街並みを歩きながら、二人で話を弾ませていると、気が付けば終電の時間が近づいていた。 「そろそろ時間だな」 「野田、どうする?俺は帰らなくてもいいんだけど」 それが指す事が何かわからない程、俺は馬鹿ではない。 けれど俺だって音無と同じ気持ちだ。 なんせこの世界では、まだ会ったばかりなのだから。 …もっと一緒にいたい。 精一杯の答えを返せば、音無は驚いた顔してから、嬉しそうに、ありがとう、とお礼を言われた。 今日は友達の家に止まる、と母親にメールをし、再び夜の街に身を溶かした。 * ばたん。 風呂場のドアが閉まる音だ。 俺が風呂から上がると入れ違いに音無がシャワーを浴びに行った。 俺は今、バスローブのみでベッドに倒れこんでいる。 こういう所…所謂ら、ラブホテル、っていうやつには多少なりと抵抗があったのだが、いざ入ってみればそうでもなかった。 部屋も綺麗だし、ベッドはふかふかだし、テレビにはスクリーンとか、風呂にはジャグジーまで付いていた。 テレビは付けてみたけど見る気になれなかったからすぐ消したけど。 「うー…」 さっきから緊張で思考が変な方向に傾いていく。 音無とする、のは初めてじゃないのに――この世界では初めてだが――本当に、初めての時くらい緊張していた。 どうしようどうしよう。 ごろごろ転がりながら、布団をかぶる。 悩んでも無駄なのはわかっているのに焦ってきた。 その時再び、ばたんと音が聞こえて、反射的に肩が震えた。 やばい、音無が戻ってきた…! 緊張で体を強ばらせていたら、いつの間にか俺と同じバスローブ姿の音無が心配そうな顔でこちらを見ていた。 「野田?大丈夫か…?」 「だ、だだ大丈夫だ…っ」 きっと今、俺の顔は赤いだろう。 恥ずかしい。噛みすぎだ。 ぎしりとベッドが軋む。 布団を剥がれ、羞恥心に見舞われる。 音無の顔が、見れない。 「野田」 「な、なんだ…?」 「こっち向いて」 「無理だ…っ」 今音無の方を見たら。 心臓がばくばくと大きな音を立てる。 頬にキスを落とされて、おそるおそる音無の方を見る。 「ふ、顔真っ赤だぞ」 「〜〜っ!」 くすくすとからかわれて、涙目になりながらも睨んでみる。 さらりと頬を撫でられた。 「久しぶり、というか一応初めてだけど…いいのか?」 「そんな事いちいち聞くな…」 俺も少しは戸惑っていたが、目の前にいるのは音無だ。 音無以外の誰でもない。 それなら答えは一つ。 意を決して、音無に顔を近付けキスをした。 「はっあ、んあぁ…っ」 「は…、野田…」 一番奥まで繋がって、詰まった息を吐く。 久しぶりだからと焦らしに焦らされ、もうわけがわからない。 ぬちゃりと粘着質な音が、聴覚をも犯してゆく。 「…俺、野田に逢えてよかったよ、こうして今、一緒にいれて」 「俺…も」 「こればかりは神様に感謝だな、」 そう言って音無は微笑む。 俺も釣られて笑った。 「音無…」 「ん?」 ぎゅっと体を密着させるように、首に回した手に力を込める。 はぁ、とかかる熱い息に、ぴくんと体が震えてしまう。 無言で続きを促す音無の耳元で小さく呟いた。 「愛してる…」 こういうの、俺が言うガラじゃないのはわかってるけど、今一番伝えたい事だ。 よっぽど意外だったのか、音無はぽかんとこちらを見つめ、そして。 「ごめん野田…、手加減できない…っ」 「ひあっ!?ぁ…っ、おっき、くなっ、ふあぁっ!」 入れられたままの音無のそれが、更に大きくなるのを感じて声を上げる。 ぐちゃぐちゃに中を掻き回されて、ひっきりなしに喘ぐ事しかできない。 「あふっあ…っ、んっやぁっ!」 生理的に流れた涙を舐め取られ、ちらりと見た音無の余裕のない顔に、ぞくぞくと背中に甘い痺れが走る。 「ひ…っあん!ぁっあ…ゆ、づる…っ」 「野田…っ」 繰り返される律動と、名前を呼ぶ熱い声に煽られる。 与えられる、触れられる全てが快感に変換されるような気がして、奥を抉られる感覚に目を瞑って体を預けた。 きっと今日は、俺にとって最高の誕生日、なのだろう。 きみがとなりにいる それが何よりも 一番の幸せです |