それはオペレーションも何もなく、だからと言って授業を受けるわけにもいかないから、寮の部屋でぐたぐだとしてた時の話だ。

ベッドに寝転び、図書館から持ってきた本をぱらぱらと捲る。
そんなに本には興味がないけれど、他にやる事がないなら無駄な時間を過ごすよりマシだと思う。


―――野田は今何してるかな。

ふとそんな事を考える。
あいつの事だし、また河原で鍛錬か、はたまた部屋で昼寝か。
考えだしたら会いたくなってきて、本を閉じる。

立ち上がろうとした時、トントン、と控えめにドアをノックする音が聞こえた。


「…入っていいか」

ドアの向こうから聞こえたのは、聞き慣れた野田の声。
慌てて返事をして、ドアを開ける。

照れてるような、怒ってるような表情をしている野田を中に招き入れる。
野田は持っているハルバートを壁に立て掛けると、ベッドの端に座った。
俺もその隣へと座る。

「どうしたんだ?」

なぜここにきたのかが気になって聞くと野田は俯いて、小さな声で返す。

「…急に、貴様に会いたくなった、だけだ」

本当に小さな声だったが、今はそれでも十分すぎるくらいに聞こえて、嬉しくなる。

「そうなのか。俺も野田に会いに行こうと思ってたから丁度よかったよ、ありがとう」
「…ん、」

そうすぐ隣にある紫の頭を優しく撫でると、野田はふにゃりと体から力が抜けたのか、俺にもたれかかってきた。
その可愛さにくらっとして、野田、と声をかける。
自分でもびっくりするくらい、甘い声が出た。

「なんだ?」
「愛してる」
「いっ…!いきなりなんだ貴様は…!?」

率直にそう言う。
ばっ、と上がった野田の顔が耳まで赤くてついつい笑ってしまった。

ふと唐突に、

君に会いたくなった
それはやっぱり君も同じ



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