鈍感天然タラシな音無








食堂でいつもの席に着き、食券で交換してきた麻婆豆腐を机に置く。
スプーンを手に取り、掬って一口食べると、辛さが舌に広がった。

なんていうか、本当、ありえないくらい辛い。
けれどそれと同等、もしくはそれ以上においしいのがやめられない訳だった。

と、その時だった。


がたん!

音がしたかと思って隣を見れば、乱暴にイスに座る野田の姿があった。

「どうした、野田?」

いつもは皆が食べている一つ後ろの席で黙々とご飯を食べている野田がいきなり俺の隣に来たとなると、驚く。
たまに一緒に食べる事もあったが、それは全部俺から誘ったもので。


「…、貴様には関係ない…っ」
「そ、そうなのか」


言いながらもう一口麻婆豆腐を口へ運ぶ。
ちらりと見た野田の顔は赤かった。
怒ってるのか?

変に刺激してもハルバートで滅多刺しにされるだけだから、これ以上は詮索しないようにする。


「お、音無…」

さっきからこちらをちらちらと見てきたと思えば、今度は呼ばれた。
麻婆豆腐を食べる手を止め、隣にいる野田の顔を覗き込む。


「かかか、顔が近いぞ貴様っ!」
「え、そうか?」

そんなに近くないと思うんだけど。
赤い顔を隠すようにそっぽを向いてしまう。

「野田、さっきからどうしたんだ?」
「な、なんでもない…!!」

いつの間に食べたのか、残さず食べ切った皿を持って、野田は逃げるように去っていった。




なんだったんだ…?
あとで河原にでも聞きに行くか。

「はー…」

ため息が聞こえて、野田がいた方と逆に目を向ける。
日向が呆れた顔でこっちを見ていた。

「お前さ…なんでああなんだ?」
「ああって何がだ?」

いきなりそう言われてもわからない。
聞き返せば、またため息。

「何がって…野田の事に決まってんだろ?音無、お前鈍感すぎ」

は?俺が鈍感?
そんな事を言われて疑問ばかりが頭を支配する。
というか野田の事って何のことかさっぱりだ。

「鈍感って何の話だよ、それに野田がどうしたんだ?」
「それが鈍感っつってんだよ、こりゃ野田も大変だわ」

日向は呆れた様子で笑うと、俺が貰っちまうぞ?と呟いてどこかへ行ってしまった。
貰っちまうぞって何をだよ。
今日の二人はよくわからない。

麻婆豆腐を食べおわり、ひりひりと痛む唇と舌を水で潤す。

本当辛い。
改めてそう思いつつ、俺も席を立ち上がる。

日向に色々聞きたいのもあったが、とりあえず河原に行ってみるとするか。

いつになったら

(「野田ー!」
「うわっ!な、なんで貴様ここに!?」
「いや、さっき何か言い掛けてたみたいだから聞きに」
「帰れ!!」)



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