色々と捏造しまくり注意 季節は春から夏に変わって、この世界でも例外なく蒸し暑い日が続いていた。 とにかく暑い。 自分の寮室か校長室かどこかの教室に籠もってないとやってられない。 因みに今俺がいるのは生徒会室だ。 俺は生徒会長でも役員でも何でもないのだが、恋人である直井が生徒会長代理のため、誰もいない生徒会長室でその帰りを待っていた。 とにかく、エアコンが付いている部屋にいないと死んでしまいそうだ。 死ねないけど。 ドアを隔てた一歩先は地獄だ。 夏は誰もがそう思っているだろう。 戦線メンバーは衣替えをして長袖から半袖に替わって、もちろん俺もNPC達も夏仕様の制服になっていた。 「只今帰りました!」 「おかえり」 ばたん、とドアが開き、生徒会室に仕事を終えたらしい直井が帰ってくる。 外は暑いのに、よくやるなと思う。 でも俺とは違ってしっかり仕事をするあたり、流石だと感心もした。 俺は最近直井がどこからか持ってきた三人掛けのソファに座っている。 直井は帽子を脱ぐと汗を拭いながら、俺の隣に座った。 「お疲れ、ほらこれ」 「あ、ありがとうございます」 俺がさっきまで飲んでたやつだがまぁ構わないだろう。 直井はいつものにこにこした笑みを崩さないまま、俺からペットボトルを受け取ると両手で持ってこくこくと水分を補給する。 その姿を可愛いな、と頭の隅で考えながら見ていると、直井がペットボトルから口を離して俺を見上げる。 直井もエアコンのお陰で汗は引いたらしく、さっきよりは涼しそうだ。 「…音無さん、」 「ん?」 見てるのバレてたか?と少しだけ考えていると、直井が机にペットボトルを置いて俺の腕にもたれかかってきた。 俺はずっとエアコンがガンガンにかかったこの部屋にいたため、暑いといった事はなく、むしろ半袖から出た腕は冷たいくらいだ。 その冷たい肌に直井の温かい体温が伝わって、心地いい。 「少しだけこのままでいいですか…?」 「ああ」 了承の返事をすると、肩に寄り掛かるように体重を預けてきた。 少し驚いものの、それ自体は嬉しい限りだ。 数十秒だったのか数分だったのか、心地のいい沈黙が続く。 「直井、」 先にその沈黙を破ったのは俺だった。 しかし、すぐに帰ってくると思っていた返事はない。 横へと視線を向けると、すーすーと寝息を立てて寝ていた。 やっぱり疲れてたんだな、こいつはずっと頑張ってるから。 座ったままじゃしんどいだろうし、体勢を変えてやる。 所謂、膝枕ってやつだ。 ソファの端の方に座って、直井の頭を自分の太ももへ置く。 少し動かしても起きる様子はない。 眠ってる姿は、幼い子供みたいだ。 さらさらとした髪に指を絡めながら頭を撫でていると、なんだか自分も眠くなってきて目を瞑った。 * ゆっくりと、優しく頭を撫でられる感覚に、意識が浮上した。 「ん…」 あぁ、俺寝てたのか。 直井に膝枕していて、その後の記憶がなかった。 薄ら目を開くと見えたのは天井、じゃなくて。 「おはようございます、音無さん」 そう微笑む、直井だった。 頭に感じる柔らかい感触は、そういう事だったのか。 おはようと返し上を見ると、綺麗な金色の瞳が、俺の目を見つめる。 再度頭を撫でられて。 「音無さんの寝顔、可愛かったです」 髪をくるくる弄りながら、楽しそうに笑う直井。 自分がどんな顔してるかわかってるのか? 「お前の方が可愛かったぞ?」 そう指摘すれば少し顔を赤くして、そんなことないです、と言われた。 直井は寝顔も可愛いが普段はもっと可愛い。 「俺、どのくらい寝てた?」 「えっと、僕が起きてからでしたら一時間半、くらいでしょうか」 うわ、そんなに寝てたのか俺。 ちらりと外を見るともうすっかり暗くなっていた。 「悪い、足痺れてないか?」 「全然大丈夫です」 俺は起き上がり、ぐーっと伸びをする。 欠伸をしたところで直井が音無さん、と声をかけてきた。 「今日泊りに行っていいですか?」 どうせ僕も音無さんも昼寝したので寝れないと思いますし…嫌ならいいんですが、と明らかな誘いを受けて、断る恋人がどこにいるというのだろうか。 「いいぞ、むしろ来てくれ」 「はい!」 二人でソファから立ち上がり、エアコンを切り、鍵をかけ生徒会長室から出る。 夜でマシとは言えど、やはり外はむっとしていた。 「じゃあ僕は鍵を置いて服を取りに帰ったらすぐ行きますので」 「あぁ、待ってるよ」 忘れてた事を思い出し、ぱたぱたと俺とは反対方向に走り出そうとする背中を、呼び止める。 「直井」 「はい?音無さっ」 振り向き様に触れるだけのキスをして、忘れてた帽子を被せてやる。 「ありがとう、ございます」 「じゃあ部屋で待ってるな」 「はい、それでは」 嬉しそうにはにかんでぱたぱたと走りだした直井の背中を見守りながら、俺も自室へと向かった。 今日の夜は寝られなさそうだ。 ベタで甘い恋はいかが? これからはじまるのは、 甘い甘い恋人の時間 |