ぬるい。 野田に犬耳が生えてます注意。 窓から入る太陽の光に、まだ少し眠いがぼんやりと目を覚ます。 欠伸をして、隣に寝ている野田を起こそうと、手を伸ばした時、俺はその異変に気付いた。 一瞬時が止まる。 どういうことだ、と脳をフル活用させて考えるが、結局なぜかはわからない。 ―――野田の頭に、犬の耳がついていた。 なんでだ?というかこれ生えてないか? 尻尾は? 疑問ばかりだが、見るだけじゃ何も分からない。 というわけでとりあえずその耳に触れてみようと手を伸ばした。 きゅ、と優しく掴む。 ふわふわとした毛の感触が伝わってきた。 「ん…、ぅ」 野田が小さく身動ぎをした。 やっぱりこれ本物か? 目の前の状況に完全に眠気から覚醒する。 いやいやおかしいだろ、と思うのが普通なのだろうけど、死なないのが普通のこの世界に『普通』なんて存在しない。 ゆりが言った通り―――順応性を高めなさい、そしてあるがままを受けとめなさい―――俺は今目の前にあるものを現実だと思うしかないのだ。 そうと決れば楽しむとする。 柔らかい耳をふにふにと弄っていれば、薄らと野田が目を開いた。 「んぅ…、おとなし…?」 「野田、おはよう」 耳を弄る手は止めず答えて、ふらふらと視線を迷わす野田を観察する。 おはよう、とまだ眠いのだろう、目を擦りながら返事をしてきた。 「ん…ぁ、…っ」 小さく声が漏れる。 いやいや、なんでそんな甘い声出して――――そこまで考えて一つの答えにたどり着く。 ぱっ、と耳を手から解放すると、声は止んだ。 なにがなんだかわからない様子で野田は頭に疑問符を浮かべている。 「これ、気持ちいいのか?」 「ひぁっ!?」 耳に顔を近付け甘噛みしてやると、びくっと体が震えた。 どうやら本当に気持ちいいらしい。 所謂、性感帯ってやつみたいだ。 「野田、鏡」 混乱してるみたいだから鏡を渡してやる。 「な、なんだこれは…!?」 「犬耳、だろ?」 自分の変化に、ばっと跳ね起きて驚く野田。 あ、尻尾も付いてる。 ちなみに昨日の名残で俺も野田も服を着てない。 何してたのかはそれぞれの想像に任せる。 野田は自分が裸ということが気にならないくらい驚いているらしく、不思議そうに耳を触っていた。 「貴様が何かしたのか?」 「いや、朝起きたら付いてた」 「生えてる、のか…」 野田が動かしたのか、ぴくぴくと犬耳が揺れる。 自分の意思で動かせるのか、それ。 なぜだかわからないが本当に生えてるようだ。 というか、可愛い。 普段から犬っぽいとは思ってたが実際そうなってもかなり似合ってる。 「みたいだな、尻尾は?」 「尻尾?」 尻尾に手を伸ばそうとしたが、その前に確認しようとした野田が自らが裸だった事に気付き、今更だが、見るな!と慌ててシーツで隠した。 「野田ー、おい、のーだー」 「だ、黙れ…」 「裸くらい今更だぞ?」 「それとこれとは話が別だ!」 一向にシーツから顔を出さない野田。 恥ずかしがりすぎだろ。 シーツの上から、背中に抱きつくようにして犬耳のある場所に噛み付く。 「や…っあ!」 そうしてまたばっと跳ね起きた野田の手をとる。 「な…っ、は、離せ」 「嫌。離したら逃げるだろ?」 「当たり前だ!何朝から…」 「いいからほら、ここ」 「な…っ」 ぽんぽんと膝を叩いて座ってと示せば、渋々野田は俺の太ももあたりに座った。 ほら、やっぱり野田も期待してるんだろ? 「いい子だな」 「子供扱いするなと…っんぅ!?」 反論しようとするのをキスで塞ぎ、朝からいきなり深いキスをお見舞いしてやる。 最初は離そうと肩を押していた手が、首に回って縋り付いてくるのが愛おしい。 「んっ…ふ、んぁ…はぁ、」 「…は、野田」 少しキスしただけで、はぁ、と甘い息を吐いてこちらを見るのは反則だと思う。 さっきまでちょっと嫌がってたくせに、快感に従順な体は反応し始める。 「音無…、?」 「野田、そのままな」 言って、するりと肌触りのいい体を触りながら、首筋から胸にかけて舌を這わす。 今野田の顔は俺より上にあるから、声は頭上から聞こえてくる。 「ぁ、…んっ、ふぁ、あっ」 昨日つけた跡にもう一度吸い付いて、色を濃くする。 背中をつつ、と指先で辿ると、野田がふるりと体を震わせた。 やがてふわりとした感触にたどり着き、ぱたぱたと揺れる尻尾を掴んで止めてみる。 「は…っ、あ、おとな、し…ッ」 「やらしすぎるだろ、お前…」 野田の体からへたっと力が抜けたのがわかる。 どうやら尻尾も弱いらしい。 向こうからキスをされ、もう片手を耳に伸ばす。 んぅ、とくぐもった声を上げてぎゅっと目を瞑る野田の反応を見ながら手を動かした。 ふと時計を見上げるともうすぐ8時を回る頃だった。 まだまだ朝は始まったばかり。 俺も野田もすっかりその気になっているのだ。 邪魔する者なんていないからほら、もっと楽しもうか。 キスの後息を切らす野田に、囁いた。 反論さえ呑み込んで 君に触れたい 誰よりも好きだから |