両片想いみたいな







最初はただの気に食わない奴だった。
初対面の時、好感度はゼロに近かったくらいに。

その気持ちが今こうして「恋愛」という感情に変わったのは、あいつのせいだ。


俺はずっと一人だった。
否、一人を望んでいた。
藤巻や日向は時々話し掛けてくる事もあるが、基本的に俺はあまり話さないし、会話は好きではない。

作戦本部にいる奴ら以外には嫌われてる事もあったし、何より俺はゆりっぺが好きなはずだった。


それなのに、あいつは、音無は。
暇あったら俺に話し掛けてきたり、河原へ来たり。

迷惑だと言っても一向に引き下がってくれなくて。
そのうちそれが日常になって、音無が隣に居ることに違和感を抱かなくなった。

いつの間にか生まれた音無への恋愛感情。

だけどあいつは人気者だ。
ゆりっぺだって日向だってみんな信頼してて、戦線メンバーからも一目置かれる存在。

俺とは性格は真逆で、音無の隣には常に誰かが居る。
だから俺に構ってくれるのもその中の一人なだけ、で。

それなら最初から優しくしてくれなければよかった。
こんな感情を持つ前に、関わるのをやめればよかった。

今更すぎる後悔に苛まれて、気付けば俺は泣いていた。
ツー、と頬を伝った涙が、地面にぽたりと落ちる。


「野田」

不意に名前を呼ばれる。
反射的に声のした方を見れば、音無が立っていた。

「…っ、」

今一番会いたくない人だった。
なんでこいつは、こんな時に。


「野田…?泣いてる、のか?」

驚く音無に気付いた頃には遅くて、俺は急いで涙を拭う。

「そん、なわけないだろう…!」

言葉が詰まってうまく離せない。
音無から背を向けて、それ以上何も言えなくなった。
最悪だ。本当に今日は最悪。

音無が近づいてくる気配。
逃げ出したいのに、体は動かない。

「来るな…っ!」


この微妙な距離はどうやったら埋まるのか。
俺はもう、隠し通せる自信なんてなかった。

気づいてお願い気づかないで

二人の気持ちが分かり合うまで
一体あと何秒―――?


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