野田に初めて会ったのは保健室。

入ってくるなりハルバードで切り刻まれた。
それから球技大会やら、なにかと俺に突っ掛かってくるところが可愛いと思い始めた。

それが恋愛感情に変わり始めたのはいつだっただろうか。

あの頃は両思いになれるとは思ってもなかったし、ましてや告白さえする気はなかった。
野田はゆりが好きだと思っていたのもあるが。

けれどふとした事がきっかけになって恋人同士になった。
そうして俺の知らなかった部分を見るたびに、前よりも惹かれていくのがわかった。


例えば野田は辛いものが苦手。
前に俺の麻婆豆腐に挑戦しようとして涙目になっていた。

例えば表情の変化。
傍目から見れば不機嫌そうな顔しているが、本当は違う。
そういう機微がわかるようになった。

これ以外にもまだまだたくさんある。
とにかく野田は、関われば関わるほど惹かれる存在なのだ。



「おい、音無」

その声で我に返る。
ぼーっとしていたが、どうやら鍛錬が終わったらしい。
野田は俺の顔を覗き込むように見ていた。

うわ、近い。


「どうした?」

怪訝そうに顔をしかめる野田にそのまま口付けた。
合わさったのは一瞬、すぐ離れて、顔を真っ赤にしてる野田を見つつ、立ち上がる。

「な、な…」

あわあわと同様して唇を手で触る野田に、帰るか、と手を引く。

「貴様…」
「なんだ野田、嫌だったのか?」

意地悪くそう聞いてみれば、野田は真っ赤にした顔を反対側に逸らして呟く。


「…嫌とは言ってないだろう」
「ならいいだろ?」
「……あぁ」

小さな声の了承を得て、もう一度キスをした。

「ん…っ」

今度はさっきみたいな触れるだけのキスじゃなく、深いキス。


「んぅ…んん…ん、ふ」

舌を侵入させれば、控え目に自分から舌を絡ませてくる。

こくんと唾液を飲み込んで、まだ慣れないらしく息苦しそうにする野田を、キスから解放してやる。

「はぁ…っ」
「ちゃんと息しろって」
「できないのだ…!」
「帰ったらじっくり教えてやるよ」
「教えなくていい!」

そんな会話をしながらも、手を握ると、小さく握り返してくる野田が可愛くて仕方ない。

そしてそんな一面にまた、惹かれた、そんな気がした。

もう一度触れたい

そう思うのは、
やっぱり君に惹かれているから

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