11話以降から捏造





影が出てきてからというもの、日向と直井の二人と行動する事が多くなった。
俺がやろうとしていた事に勝手に首を突っ込んできただけなんだが。

確かに二人は戦闘慣れしてるし頼りがいはある。
しかし。


「音無さん!今日はどこ行きます?」
「校舎内でも回ったらいいんじゃねぇか?」
「お前に聞いてない、僕は音無さんに質問してるんだ!」
「んだと…!」

いつものように言い合いを始めてしまった二人にため息をつく。
口を開けばずっとこれだ。

もう少し仲良くできないものか、思いながらそれを止めに入った。

「ほらもう喧嘩はやめろ」
「でも音無さん!この愚民が…」
「違う音無!こいつが…」
「終了」

また言い合いをしそうな勢いだったから二人の頭をコツンと叩く。
まったくこいつらは子供か。
ぽかんとして黙ってしまった二人に、行くぞと声をかけて歩きだした。

「音無先いくなよ!」
「まっ、待ってください音無さん!」

ぽかんとしてる内に結構な速さで歩いた為、俺との間には少し距離が開いていた。
二人は追い掛けてきて、俺を挟むように横に立った。
本当こいつらは仲が良いんだか悪いんだかわからない。

いつ影が出てくるかわからないから、普段から注意をしておかないと危ない。
NPCになるのだけは嫌だしな。


そう言えば最近忙しくて野田に会ってなかった。
前に会った、というか見かけたのは、校庭で大量の影と戦った時だったか。
声をかけようと思った頃には野田の姿はもうなく、探す時間もなかったから諦めて、それ以来だ。
そこまで思い出して、同時にもっと大切な事を思い出した。

付き合い始めた頃、野田とした約束。
ずっと一人だった野田にした、約束。
ああ、なんで今まで忘れていたんだ!

適当に歩いてた足を止める。

「ちょっと行きたい所があるから行ってくる」
「どこいくんだ?」
「僕も行きます」
「いや、俺一人でいい」

危ないのは重々承知だが、少しなら大丈夫だろう。
二人は渋々わかったと言い、俺はお礼を言って走りだす。

野田がどこにいるかは、なんとなく。
俺の勘が告げていた。
ここにいる、と。


階段を登りきり、ドアを開ける。
風の吹く屋上には、愛しい人の姿があった。


「野田!」

野田はやはり一人だった。
ゆりに単独行動はするなと言われたのに。

呼ぶと、野田がゆっくりと振り返る。
艶のある紫の髪が、風になびいた。

こっちを見た顔は怒っているわけでもなく、笑っているわけでもなく。

「…と、なし」

久しぶりに聞いた声が俺の名前を呼ぶ。
野田の方へ近付くと、向こうから抱きつかれた。
息が詰まる。
がらん、と音を立ててハルバートが床に落ちた。

滅多にない行動に内心びっくりしながらも、抱き締め返した。
温かい体温に、野田の匂いに会えなかった時間が埋められてゆく、そんな気がした。

「野田、」
「…馬鹿が…一人にするなと、いっただろう…!」
「ごめん」

ぎゅう、と強く抱き締める。
野田の体から力が抜けてゆくのがわかった。

「俺は…貴様を、待っていたんだ、ぞ…」
「ごめん、ごめんな野田」

ぐすりと泣く声が聞こえて、もう一人にしないから、と囁いた。
暫く抱き合ったまま時間が過ぎる。

「大丈夫か?」
「あぁ」

離れて、少しだけ距離をとる。
野田は落としたハルバートを拾うと、屋上の手すりへもたれるように座る。
俺もその隣へと腰を下ろした。

「野田、こっち向いて」

さっき自ら抱きついたのが恥ずかしかったのか目を反らす野田は俺がそう言うと躊躇いながらもこっちを見てくれる。

「じろじろ見るな…」

赤く染まってゆく頬に、あぁやっぱり野田は可愛いな、なんて考えながら、どちらともなく唇を重ねようとして―――。


「後ろだっ!」
「っは?」

驚くのも束の間、野田がそう叫び、ハルバートを俺の後ろに座ったまま振り上げた。
振り向くと、そこには数十体の影。

なぜこんなタイミングで。
空気読んでくれよ!と言いたいのは山々だが、こればかりはしょうがない。

俺も銃を取り出して襲い掛かってくる影を迎撃する。
野田もハルバートで片っ端から影を斬っていった。

数十体だった影が増えてゆく中、思考の隅で考える。
この影を倒し終わったら、そうしたら。

恋の味を教えよう

(「野田、キスして」
「な、なんで俺がしなければならんのだ…!」
「じゃあいいのか?」
「う…、」)
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