「シズちゃん!ちゃんと聞いててね!!シズちゃんへのラブソングなんだから!」
「あー、はいはいわかったわかった」

池袋某所、カラオケの一室。
不本意な事にも俺は臨也にここに連れ込まれてしまった。
池袋でばったり会って、どうしたものかと考えていれば臨也が突然近づいてきて手を引かれて現在の状況に至る。

臨也はそりゃもうノリノリで歌いながらこっちを見てはにやにやにやにや。
なんなんだこいつ。

そんな事を考えているとすぐに一曲が終わり、その曲で予約曲が最後だったのか、臨也はふー、と息を吐いた。


「ちゃんと聞いてたー?」
「聞いてた聞いてた」

本当は前半あたりしか聞いていなかったのだが、まぁ、いいだろ。
答えれば臨也はふふ、と楽しそうに笑った。

悪い気がしないでもない。
仮にも恋人だし。

「ねーねーシズちゃん」
「なんだ」
「勝負しようよ勝負」

にやりと不敵な笑みを浮かべた臨也の提案に、なんとなくノってしまった自分が悪かったのだろうか。





「やった!俺の勝ち!」
「…」
「なんか言ってよシズちゃん」
「殺す」
「えー、そんな理不尽な死に方したくないなぁ」

冗談だろ、俺なんで負けてんだ、やばい、これは非常にやばい。
負けた人に一つ命令を下せる、それが勝者に与えられる権利。
臨也が勝つとか、どういうことだ。

じりじりとにじり寄る臨也に、冷や汗が流れた。


「わかってるよね?」
「う…」

勝ち負けにぐだくだ言うのは、嫌いだ。
それは理屈を捏ねるのと一緒だし。
臨也と同類には死んでもなりたくない。

するりと、臨也の手が太股に触れた。

「っ!臨也…ッ」
「なぁに?」
「てめ、何する気…」

聞けば、そりゃもういい笑顔で臨也は答えた。


「命令。俺に犯されて。」










「ふっ、あ…ぁ、う!」

どうして、なぜこんなことに。
ぐちゅぐちゅと音を立てながら臨也が指を動かす度に、俺の口からは嬌声が漏れる。

「声我慢しちゃ駄目だよ?せっかくマイクあるんだから」
「はっ…ぅ、やっ…」

そう。
今俺はマイクを持つように指示されている。
要するに、普段耳に入ってこないくらい小さな吐息も、嬌声も、音も。
全部マイクが拾って上のスピーカーから反響した。

いつもと違う雰囲気に、なんとも言えない快感が襲う。


「っざや、も…っ無理…ッ」
「えー、もうちょっと頑張ってよシズちゃん。それとももう入れてほしい?」

あーもう!
わかってんならさっさとしろっつってんだノミ蟲!
そう言ってやりたかったが、中で蠢く指が一点を引っ掻き、背筋がぞわりと粟立つ。


「ひっ!ぁ…!」

その喘ぎもマイクを通して響き、聴覚を犯してゆく。
段々力が抜けていき、マイクを落としそうになるが、それさえも後ろから臨也に制された。

「マイク落としちゃだぁめ。いつもより興奮するでしょ、こういうの」

もうイきそうだもんね?
後ろにいるからどんな表情をしているかわからないが、笑っているだろうと確信する。

「はぁ、いざ、や…っ、」
「ん、なぁに?」

頭上から、声が響く。
羞恥心が悲鳴をあげたが、それが気にならない程思考は蕩けきっていて。


「も…、指、いいから…っ、臨也のいれろ…っ」

普段絶対言わない言葉を言ったせいか、無理矢理振り向いた先にあった臨也の顔は、若干赤くなっていた。
ぐるん、と視界が反転し、組み敷かれる。
マイクががたん、と音を立てて床に落ちたが、今はそんなことをいちいち気にしている暇もなかった。

「シズちゃん、どこでそんな誘い方覚えたの?反則…ッ」
「ふ、ぅ、ぁ、ああぁぁっ!」

早急にあてがわれた臨也のそれに、いきなり奥まで穿たれ息が詰まる。
しかし臨也にいつもの余裕はなく、俺がその背に手を回すと容赦なく突き上げてくる。

「ぁ、んぅっ、はっ、やぁっ!」
「…シズちゃんって本当えろいよね…っ」

ぎしりとソファが悲鳴を上げる。
卑猥な音と、自らの喘ぎ声が部屋を支配する。
俺も臨也もイレギュラーなこの状況に、少なからず興奮しているらしい。
背中に回した手で体を近付け、少し驚いた表情を見せる唇に噛み付くように口付けた。

触れた指先にうずく熱

(「もう手前とはカラオケ絶対行かねぇ…」
「なんでさ!シズちゃんだって乗り気だったクセに」
「黙れノミ蟲…!」)



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