つまらない事で喧嘩をした。
もう何がきっかけだったか忘れてしまう些細な事で。

臨也と静雄、お互い意地を張って謝るに謝れなく、時間だけが過ぎていってしまう。



「…はぁ」

静雄は何度目かわからないため息を吐いた。
まるで自分の心と同じような曇り空に、憂鬱な気分になる。


「どうすりゃいいんだ…」


今までは喧嘩してもすぐに臨也が謝ってきて、それで終わりだった。
けれど今回は違う。

だからこそ、静雄は困惑していた。

どうすれば仲直りできるだろうか、
どうすれば…。


考えても答えは一つしかない。
謝るしか、ないのだ。



「…」

一人でいるのは寂しい。
謝りたい。
でも気持ちを素直に出すのは苦手だ。

堂々巡りの思考。
けれど、それでも何もしなければ待っているのは別れだ。
それだけは嫌だ、と静雄は頭を左右に振る。


「…いくか」

小さく呟いて、静雄は家を出た。
そうして歩きだす。臨也の家へと向かって。



***



臨也の家へと着いた静雄は、オートロックのかかったエントランスで立ち止まる。

インターホンで呼び出すと、臨也の声が聞こえた。


「…入っていいよ」

それだけが聞こえ、自動ドアが開く。
中に入り、臨也の部屋へと向かった。

トントンと、ドアをノックする。
すぐ開いた玄関先には臨也が立っていた。


数秒の沈黙の後。
二人は同時に口を開いた。


「ごめんね、シズちゃん」
「臨也、ごめん」


臨也も静雄も、同時にお互いに謝る。
そして、二人して目を合わせ、吹き出した。

「あははっ、馬鹿みたいだね、俺達」
「はは、そうだな…っ」


こんなに早く仲直りできるのに、なぜいらない意地なんて張っていたのか。

二人は笑い合うと、どちらともなく抱き締め合った。


「…寂しかった」
「うん、ごめんね、でも俺も色々我慢してたんだよ?」
「なんだよ色々って…」
「それは、ねぇ…?」


静雄が顔を上げた先には、にやりと笑う臨也の顔。

「…後でな」

大体何のことか察したのか、静雄は意味ありげに笑う。
臨也はそんな反応に少し驚く。


「とりあえず腹減ったなんか作れ」
「いいけど、シズちゃんも手伝ってよね」


やっぱりキミが好き

どれだけ喧嘩しても、
やっぱりキミが好きだから
すぐに元通りになる



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