【第四章】猫の宴 編 −プロローグ−


「お迎えにあがりました 春歌様。」

猫が一声鳴いた。それが帰りの扉を開く鍵

「春歌さん!帰らないでくださいよ!」

此処で出会った大切な人たち。たくさんの笑顔をくれた掛け替えのない人

「帰りたくないよ…まだみんなと一緒にいたいよ。」

だけど鍵の開かれた扉を通れと

「きっと貴女は帰ることを望みますよ。」

猫はまた一声鳴く

「行かないでよ春歌!ずっと傍にいるって約束したネ!」
「自分で決めたことだ。今更、俺たちがとやかく言うもんじゃねぇよ。」

どんなに抗っても叶うことのない望み

「貴女はお忘れですか?貴女が何を見たのか、何をしたのか…何を忘れているのか」

誰かを傷つけるというのならば、それならいっそのこと忘れてしまえばいい

「バイバイ。」

猫の手を引いて扉を潜る
私の本当の居場所へと繋がる、長く重い帰途の道

猫の宴 編

prev next

[back]