女の子はもっと大切にしようよ!


新選組の女中として働き始めて早1週間。気づいたことがあります

「沖田さんって仕事してるんですか?」
「アンタの見てないところでちゃんと、やってまさァ。」
「私の見てるとこでやってくださいよ。」

この人が真面目に仕事している所を1度も見たことがないということです。こんなんでも一応、一番隊隊長らしく何回か部下の方たちに指示をしているのを見かけたことがある。だけど、それは指示だけでこの人自身が動いてる所をこの1週間、見たことがないのです

「自分で言うのも何なんですが、私が甲斐甲斐しく働いてる横で、ゴロゴロしながら煎餅齧られてると凄くイライラします。」
「何でィ?煎餅が欲しいのかよ。」
「違います。そう言う意味じゃありません。察しろよ。」

今なら分かる。銀さんが彼らを「税金泥棒」と罵っていた意味が

「後で土方さんに怒られても知りませんからね。」
「土方なんざ怖くねーよ。」

こんの税金泥棒どもがーっ!と叫んで寝転んでる沖田さんを蹴飛ばしてやりたいけど、そんなことは出来ない。だって私、確実に殺される。だけど、せめてもの報復で土方さんに沖田さんのサボり場所をチクってやろう。どうせ今から買い物に行くし、ついでだついで。私はエプロンを外して、新撰組用のお財布を持って掃除していた客室を後にした。向かうは土方さんの部屋だ

「土方さーん。沖田さんが客室でお仕事サボってまーす。」
「総悟ォォォォォォ!」

丁度、タイミング良く部屋から出てきた土方さんにそう言えば、土方さんは額に青筋を浮かべて客室へと走り去ってしまった。何というスピード。そして数秒も経たない内に、客室の方向から耳を塞ぎたくなる様な大きなバズーカーの音が聞こえてきた

「…ぜ、絶対沖田さんわざとだ…そして、掃除が増えた…。」

自業自得だね!そう言って笑う、ホグワーツにいる友人の姿が容易に想像できた



「天気良すぎてこりゃ、眠たくなってきちゃうな。」

ふわぁと大きな欠伸を1つ。私はトロトロとかぶき町の町を大江戸スーパーに向けて歩いていた。そこで見つけた銀色

「あ、銀さんだ。おーい、銀さ……って、えぇ!?」

だけど銀さんはどうやら1人ではないらしく、紫の髪の毛の女性と一緒だった。しかもぼんきゅっぼんの色気たっぷりなそのお姉さんは、銀さんの腕にその腕を絡みつけて擦り寄っているではないか!

「(ぎ、ぎぎぎ銀さんの彼女ォォォ!?)」

大ニュースだ!大ニュース!皆に言ってやろ…ってあれ?皆は知ってるのか?私、此処に来たばっかりだから、私だけが知らなかったとか。あれ?でも銀さんから彼女いるとか話、聞いたことないぞ?あ、でもそもそも自分から言うものでもないか。だけど銀さんに彼女いたら、銀さん「俺の彼女はさー。」とか常に惚気てそうだけど。頭の中ではそんなことをグルグル考えてたけど、目は銀さんとその女性に釘付けだ。勿論、電柱の裏に隠れて

「銀さァァん!こんな所で会うなんてやっぱり私たち愛の赤い糸で結ばれてるのねェェェ!」
「お前との糸なんて何も結ばれてねェよ!てか近寄んな触るな抱きつくなァァァ!」
「もう!銀さんそんなことばかり言ってると、さっちゃん泣いちゃうゾ!」
「知らねェよ勝手に泣いてろよ!てかお前マジであっち行け!銀さんもうお前と知り合いって思われるのも恥ずかしいよ!」

は、ははは激しいィィ!銀さん沖田さんまではいかないと思ってたけど、どっちかって言うとSだと思ってたけど、そんな!ドメスティックバイオレンスゥゥゥゥ!女の子はもっとこう!こう、優しくしないと!いや、人それぞれの愛の形があるから、私がとやかく言うのもあれなんだけどね!?ってか彼女さんも喜んでるんだけどね!?Mか!?Mなのか!?

「また、そんなに私を罵って!そんなに私を甚振るのが気持ち良いの!?快感なのね!?良いわ!その思いを全て私にぶつけなさいよ!もっと私を罵りなさいよ!嘲笑いなさいよ!それが私の悦びとなり生きる糧となるのよ!」
「気持わりィィィィ!!お前もうマジうぜェよマジ帰れよォォォ!」

ついに足が出たァァ!銀さんが彼女さんを蹴飛ばしちゃったよ!というか銀さんダメだよ女の子にそんなことしちゃ!愛想つかされちゃうよ!あれ?でも彼女さん喜んでるよ!Mか!?やっぱりMなのか!?

「春歌ちゃん、こんな所で何してるの?」
「家政婦は三田ごっこアルか?」
「ひぃぃぃぃ!」

お姉さんうっかり口から心臓飛び出しそうになっちゃったよ!驚いて後ろを振り返れば、きょとんとした顔で私を見ている新八くんと神楽ちゃんがいた。恐らく定春くんの散歩中なのか、定春が後ろの方でわん!と鳴いた

「しーしー静かに!銀さんと彼女さんに見つかっちゃうよ!」
「え!?銀さんに彼女!?」
「あのマダオいつの間に彼女作ったネ!」

彼女というワードにいち早く反応した2人は、素早く私の隠れていた電柱に身を潜めた。は、良いけど流石に3人は隠れきらずに大きく身体がはみ出してしまっている。定春くんにいたっては、顔すら隠せていない。ちょ、バレる!

「あそこのグラマーな女性なんだけど。」

私がチラリと2人に目配せをすれば、なんだとばかりに新八くんは肩を落とした。神楽ちゃんにいたっては、興醒めヨとばかりにすっかり興味をなくしてしまっていた。え、どうしたの2人共!?そんな2人にどうしたのと聞けば、神楽ちゃんは呆れた様に息を吐いた

「春歌、あれは銀ちゃんのストーカーアル。」
「え、ストーカーなの!?え、ストーカーってあのストーカー!?」
「あのストーカーだよ。」

世も末である。あんなに美人さんなのにストーカーだなんて…というか銀さん意外と隅に置けないよ。てっきり、あまりのちゃらんぽらん具合に女の子なんて一切、縁が無いとちょとだけ、ちょっとだけ思ってたんだけど…

「あ、定春待つアル。」

まさかの衝撃事実にぽかーんとしていると、後ろにいたと思った定春くんがダッと銀さん達に向かって駆け出していた。そんな定春くんは神楽ちゃんの静止も聞かずに、目的の場所へ辿りついたと思うと、大きく口をあけてぱくりと何かに齧り付いた

「ぎゃあァァァァァァァ!!」

耳を塞ぎたくなるような断末魔の叫びが、かぶき町の町に響き渡った


女の子はもっと大切にしようよ!
(それはもう見慣れた光景)

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