今日の献立


「沖田さん大問題が発生しました。」
「何でィ。」
「私、和食なんてここ何年も、作ってないです。」
「マジでか。」
「マジでだ。」

すっかり忘れていた衝撃事実。私の通っていたホグワーツは全寮制だ。料理は屋敷しもべ妖精たちが作ってくれるから、学校にいる間は料理をする必要は全くなかった。夏休み休暇で実家へ帰宅した際には、母の手伝いとして料理を作ったりもしていた。だけど私の実家はイギリスにある。もちろん日本人の家系だけど、魔法省で働いている両親の都合で、私がホグワーツに入学するのと同時にイギリスに引っ越していたのだ。だから専ら食事は洋食ばかり。和食なんて食べた記憶があるのは精々、日本にいた7年も前だろう。

「作れないことはないんですけど…ずっと洋食ばっかりだったから、コツを掴むまで時間がかかりそうで…。」
「マジでか。」
「マジでだ。って何で繰り返してるんですか。」

いや、でも作れないことはないんだよ。こう、思い出せないだけで…

「思い出すんだ私。あの時の記憶を…手の動きを…っ!ま、その前に冷蔵庫の中身確認しよーっと。」
「マイペースすぎるだろお前。」

とりあえず冷蔵庫の中にある材料でメニューを決めよう。ま、材料が分かれば沖田さんもいるし献立は大丈夫でしょう。足りなければ買い出しに行けば良いし…えっと

「卵に新選組ソーセージに魚に野菜に新選組ソーセージに豚肉に新選組ソーセージに新選組ソーセージに新選…っておィィィ!どんだけ新選組ソーセージ入ってんだよォォ!」
「それ山崎の密偵食でさァ。」
「ストックにも限度があるでしょうが!」

業務用の大きい冷蔵庫の1/3が新選組ソーセージで埋め尽くされている…どんだけ好きなんだよ新選組ソーセージ!てか何だよ新選組ソーセージって!というか…

「沖田さん…この大量のマヨネーズは何ですか…カブトムシでも呼び寄せるんですか?」
「虫の餌には違いねぇけどな。それ全部、土方のですぜィ。」
「味覚障害ですか。」
「お蔭で土方の野郎は脳にまで異常をきたしてまさァ。」

何だかこの冷蔵庫事情だけで、この新選組の食事情が分かってきたかもしれない…

「とりあえず魚とお味噌汁とお漬物…あと野菜と新選組ソーセージで炒め物を作りましょう。」
「何でィ。ババアみてぇなメニューだなァ。」
「全国のババアに謝ってください。とりあえず沖田さん、作り方うろ覚えなんで手伝ってくださいね。」

とりあえずこの大量の新選組ソーセージを消化してやろう。そして明日、買い出しに行こう



「お前ら!今日は春歌ちゃんが夕餉を作ってくれたぞ!心して食えー!」
「うォォォォォ!!!」

何だこの熱気は何だこの異常なテンションの高さは

「最近ずっと土方さんが食事を作ってたからね。皆、久しぶりのちゃんとしたご飯が嬉しいんだよ。」
「あ、山崎さん。土方さんが作ってらしたんですか?」

ちょっと涙ぐみながら笑う山崎さん。他の隊員の方達も泣きながらご飯をかき込んでいる。本当に苦労したんだなって伺える…。きっと

ブチュブチュチュチュ

あのマヨネーズ丼が毎回、食卓に並んでいたんだろう。あんなのが食卓に並んだら私だったら絶対に餓死の道を選ぶ。何あれ残飯なの?…うぇっぷ

「とりあえず土方さん、全国のお百姓さんに土下座してください。」
「はァ?何でだよ。」
「遠回しにそれが犬の残飯だって言ってるんでさァ。悟れよ土方コノヤロー。」
「総悟ォォォ!剣を抜けェェ!」

それからドッタンバッタンと土方さんと沖田さんの乱闘が始まった。とりあえず巻き込まれたくないので近づかないけど、私が作った料理…少しでも巻き込んで粗末にしたら…

「…ぶっ殺す。」
「あ、あれ?春歌ちゃん…何か今、物騒な言葉が聞こえたような…あれ?あれ?」
「どうかしたんですか山崎さん?早く食べないとご飯、冷めちゃいますよ?」
「そ、そうだね!うん食べる!食べるよ!あはははは!」


今日の献立
「何か今更だけど、ババアみたいなメニューが申し訳なくなってきた…。」
「お前も全国のババアに謝りなせェ。」
「沖田さんは私に謝ってください。」


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