コノヤロー
「おお、キミが総悟が連れてきた子か!俺は局長の近藤勲だ。宜しく。」
「音宮 春歌といいます。宜しくお願いします!」
「はっはっは。そんなにかしこまらなくて良いさ。今日からキミも新撰組の一員なんだからな!」
「は、はい!」
あぁぁぁ、何て良い人なんだ!最初、パッと見た時はゴリラがいる!って悲鳴をあげそうになったけど、よく見るとそんなにゴリ………あ、いや、やっぱりそこはゴリラだ。そんな始終和やかな局長の隣には、これまた目で人が殺せるんじゃいかってくらい目付きの悪い人。この部屋に来る前に紹介していただいた土方副局長。そして何故か私の隣に座って煎餅を齧っているのが沖田隊長だ
「じゃあ、音宮は早速、屯所内の掃除から始めてこい。」
「分かりました。あ、あの…私の他に女中さんってどれ程いらっしゃるんですか?」
この広くて隊士の多い屯所内だ。恐らく最低10人くらいは女中の方がいるんだろう
「そう言えば、さっきから姿が見えませんが?」
とキョロキョロ辺りを見回すと、ポンと肩に置かれる土方さんの手
「今はお前の他に女中はいねぇから。精々、根気よく頑張れよ。」
「え、いないんですか!?」
「そうでさァ。こないだ全員、辞めちまったんでね。」
そう返すのは、ニヤニヤと笑みを絶やさない沖田さん。…え!?辞めただって!?
「お前のせいだろうが総悟。」
「いや、あれは土方さんのせいでさァ。」
「いーや、あれはお前のせいだ。」
「確実に土方さんのせいでさァ。」
後でこっそり隊士の方に聞いた話、どうも沖田さんと土方さんの横暴さについて行けずに、皆さんボイコットという名の一斉退職をされたそうだ。…あ、何だか容易に私の未来が想像できた…何これ怖い
「ま、ということなんで。精々、汗水鼻水垂らして頑張ってくだせェ。」
「……はい。」
鼻水はきっと垂らさないよ沖田さん…乙女として。と言うか、さっさと女中さん増やせよコノヤロー。なんてことは怖くて口に出すことが出来なかった
コノヤロー(何故か心の中で呟いた筈なのに、沖田さんにどつかれた)[
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