ドSな星の王子様と


「じじい、団子2つ。」
「あいよー。」

そして何故か意味のわからない急展開。凄く強引な彼に無理やりひっぱられて来た所はこれまた、こじんまりとしたお団子屋さんだったわけで、私はこっそりと誘拐じゃなかった…と息を吐いた

「俺は沖田総悟でさァ。あんたは?」
「クリスティーナです。」
「嘘付くと、そのちんちくりんな面に風穴開けますぜィ?」
「音宮 春歌です…。」

顔面にバズーカ−突きつけられた。いや、風穴どころかこれ顔、吹き飛ぶんじゃない?いや、違うんです。何か貴方に名前を教えたら危険というか…こう…防衛本能がですね?

「あの…沖田さん、何故に私は誘拐…ゴホン。つれてこられたんでしょうか?」
「最後まで言ってんじゃねえか。」

その言葉と共に、今度は器用にも眉間を刀で思いっきりどつかれた。ああ、地味に痛い

「あんた、仕事探してたんだろ?」
「へ?何で知ってんですか?」

私のストーカーですか!?って、最後まで言い切らない内に、またしても刀の先でどつかれたのはご愛敬の内であると信じたい。てか彼はさっきから何なんだ。ことあるごとに、突っ込み激しくないですか!?私たち初対面ですよね!?もっとこう…壁を作ろうよ!ね!

「巡回中に何やら、ことごとく店から追い出されてる娘を見かけたんでね。」
「それって…。」
「あんたのことでさァ。聞けば、働かせて欲しいって回ってるみてェで。」

くっちゃくっちゃと、美味しそうに団子を頬張る沖田さんに、私の団子は?と聞きたくなるのをぐっと抑えて、違うことを質問する

「巡回中って、沖田さんは警察の方ですか?」

至極全うな質問をしたと思ったけど、沖田さんはその質問にくりくりした目を更に丸くして驚いている様だった

「あんた、この制服を見たこのないんですかィ?」

そう言って沖田さんは自分の着ている黒の制服を指さすが、私はそれに首を横に振った

「私、田舎から出てきたばっかりで、こっちのこと何も知らないんです…。なので、沖田さんの制服も初めてみました。」

完璧だ。こんなこともあろうかと、銀さんと私はしっかりとシナリオを作っていたのだ。私はどが付く程の田舎からやって来た娘っ子。金銭的に不自由で、家族で暮らしていくのが困難になった為に出稼ぎとして、最近この江戸へとやって来たということ。まさかこんなに早くこのシナリオを使うことになるとは思わなかったけど

「ふーん。これは武装警察新選組の隊服でさァ。」
「武装警察…。ということは今、お仕事中ですよね沖田さん。お団子食べてて良いんですか?」
「自主休憩中でさァ。」
「100%サボりじゃねーか。」

私はまたしても沖田さんに殴られた頭を摩りながら、キッと睨み付けた。市民を守る警察が、幼気な市民に暴力をふるっても良いのか!?良い訳ないじゃないか!暴力反対!ドS反対!

「へえー、そんな強気な態度とってていいんですかィ?」
「はい?何を言ってんですか?」
「あーぁ、折角あんたに良いバイト話を教えてやろうって思ったのによ。」
「沖田さん、お茶のお代わりどうですか?すみませーん、お茶くださいーい!」

何だそれ、しょうがないから今までな理不尽な暴力全てを許してあげよう。それでバイトって、どんなバイトなんですか?期待込めた目を向ければ、彼はニヤリとサディスティックな笑みを浮かべ

「教えてください沖田様だろ?」

え、何これ。前言撤回してもいい?この人マジでSな人なの?サディスティック星の王子様か何かですか!?

「言いたくないなら、別に言わなくても良いんですぜィ?無職のまま、とっとと帰りなせェ。」
「…な、な…。」

悔しい悔しいよ銀さん!何で私、こんなに蔑まれてるの!?あああああ、悔しいけど…悔しいんだけど…

「………っきー!!教えてください沖田様ぁぁぁ!!」
「っは。まぁ、今日はこれで認めてやりまさァ。」
「……。」

今日はって何だ今日はって…何か、これからも顔合わせる様な言い方しやがって

「バイトってのはな…。」
「何ですか?」

「新選組屯所の女中でさァ。」
「………………は!?」


ドSな星の王子様と
(さて、スーパーで買い物でもして帰ろうかな
 あ、お金無かったんだった)


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