優しさがいっぱい
「いってらっさいアル!」
「頑張ってきてね春歌ちゃん。」
「…いってきます。」
今日は新選組へ初出勤の日なのです。初出勤ってもっと、こう…頑張ろう!って闘志に燃えてるもんじゃないの?寧ろ私の気分は今絶好調に鎮火気味なんですけども
「あれ?銀さんもお出かけするの?」
万事屋を出れば、さっきまでお見送りにいなかった銀さんで、しっかりとスクーターに跨り、エンジンをふかしていた。今日は1日、家にいるって言ってたのになぁ…
「あーあれだ、ちょっと野暮用だ。」
「あ!パチンコとかダメだからね!」
そっぽを向いて、間が悪そうに頭を掻く銀さんにそう言えば、「今日は行かねえよ!」って言葉が返ってきた。あれ、今日じゃなかったら行くんだ
「じゃあ、私そろそろ時間だから行ってくるね。」
そのまま手を振って、その場を後にしようとすれば、後ろから「あ、おい!」という銀さんの声
「どうしたの?」
「あーだからあれだよ!ついでだから、新選組まで連れてってやるよ!」
だから乗りなさいと、有無も言わせてもらえずにヘルメットをかぶせられた
「銀さん?」
「言っとくけど、ついでだからな!?ついでだからね!?」
「…分かってるよ。ありがとう!」
銀さんの後ろに跨って、その腰にぎゅっと腕を回した。それを合図にして、銀さんはぐんとスクーターを発進させる。何て分かりやすい優しさなんだ。私は銀さんにばれない様に、ふふっとにやける頬を隠さずに笑った
「銀さんありがとう。」
「あぁ?何か言ったか?」
「んーん何もー!」
びゅんびゅんと私たちとは逆に走っていく景色。本当に江戸って良い町だね!だってこんなに綺麗で、こんなに温かくて、こんなに素敵な人たちがいるんだから。初めて此処に来た時は、混乱したし落胆だってした。でも今は此処にいて嬉しいなって、幸せだなって思う感情が増えてきた気がした。いつ帰るから分からないけど、その日まで目一杯楽しもう!そう私は、江戸の町を見ながら決意をした
「おーし、着いたぞ!」
「わぁ、大きい!」
想像してたのよりも、遥かに大きな門に広い敷地。それを見上げて、後ろにひっくり返りそうになったのを、慌てて銀さんが支えてくれた。お手数かけます
「じゃぁ、俺はもう行くけど。頑張って来いよ。」
「ありがとう。頑張ってくるね。」
「あと、昨日はあんなこと言ったけど、何かあったらこんなとこ、すぐにでも辞めて良いんだからな。」
「へ?」
また間が悪そうに、頭を掻く銀さん。あ、もしかしてこれって銀さんが照れくさい時にする癖なのかな?
「銀さんは本当に優しいね。」
「え、そ、そりゃ銀さんはいつでも優しいじゃねぇか!」
「ふふ、そうだよね。」
何だか少しづつだけど、銀さんのこと分かってきたかもしれない
「じゃあ、銀さん行ってきます。」
「おう。いってらっしゃい。」
不器用だけど、本当は凄く凄く優しい人なんだね
優しさがいっぱい(だから頑張れる )[
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