トラブル発生


とりあえずバイトを探そうと思う。何でって?だってやっぱり万事屋が金欠状態なのは相変わらず。だから私はその主を3人に伝えて、意気揚揚と万事屋を飛び出してきたのです。だけど、バイトを探しに出てきて早4時間。未だに職に就くことが出来ません。何でも

「お譲ちゃんちょっと若すぎかなー?」
「今は天人の方が使えるからね。人間はいらねぇの。」
「あー今は人手、足りてるからゴメンねー。」
「この不況のご時世に、これ以上バイトはいらないから。」

だとかとか。もうこのまま挫折してしまいそうです。だけど絶対にバイト見つけて帰ってくるからと、たかを括って万事屋を飛び出した手前、無職で帰るのはあまりにも恥ずかしいものがある。もう少し粘ろうと思った時に、ドンっと大きな人にぶつかった

「ってぇなぁ!何処に目ぇ付けてんだガキィ!」
「…えっと、ゴメンなさい?」
「何で疑問形!?」

え、だってぶつかってきたのはそっちじゃないか。何で私が謝ってんだ?だけど言葉には出さずに、私は困った顔を見せて兎の顔をしている意外に可愛い天人を見上げた

「おうおう、嬢ちゃんのせいで腕が痛ぇんだけどこれ。どうしてくれんの?」

そう悪役感満載な笑みを浮かべて詰め寄ってくる兎。これってもしかして、慰謝料ふんだくられるパターンじゃない!?昨日、神楽ちゃんが見てた昼ドラでこういうシーンを見たぞ。だけど生憎、私にはお金が無いのだ。言っとくけど飲み物1つ買うお金すら無いんだからね!よって、この場は逃げるが勝ちだ

「本当にすみませんでした。では私はお腹を空かせた弟が待っているので、失礼しますさようなら。」
「おーっと、待ちな。これでサヨナラはあんまりなんじゃねぇの?」
「…マジでか。」

だけどそんな逃走劇も虚しく、それは腕を掴まれることで呆気なく終ってしまう。何でだ、昨日の昼ドラではそれで逃走成功してたのに!ちくしょう!でも本当、こんな時に魔法があったらあっという間にドカーンと解決してしまうのに。何て不便なんだろう

「はーなーしーてーくーだーさーいーっ!」
「はい、そうですか。で離すわけねぇだろうがよォ!」
「いや私、貴方は離してくれる人だって信じてますから。」
「お前は俺の何を知ってるわけ!?」

どんなに腕をぶんぶんと振っても、離れることはなく更にギリっと力を込められる。ヤバい、これ血止まってない?こうなったら強硬手段に出るしかない。お決まりのパターンだけど、急所を蹴り上げて怯んでいるその隙に逃げることにしよう。そう考えて足を後ろに振りかぶった時に、呑気に間延びした声が耳に届く

「おーい、危ねぇですぜィ?」

何が?と思うのも束の間。ドカーンと言う地響きも起こりそうな大きな爆発音に、凄まじい爆風そして浮遊感。一体何が起こったんだ!?でも未だ砂埃やらが激しくて、目は開けられないまま

「大丈夫ですかィ?」

だけどそんな時にすぐ耳元から声が聞こえ、つられる様に恐る恐ると目を開けば、銀ちゃんと違う真っ直ぐな栗色の髪の毛が印象的な、男の子がいた。そして今現在、どうやら私はこの爆発を起こしたであろうその人物に抱きかかえられているらしい

「…大丈夫、です。」
「そうかィ。じゃぁちょっくら此処で待ってなせェ。」

そう言って彼は地面でのびている兎の天人に近づいて、その長い耳を両方とも引っ張り顔を上に上げさせる。それからもう1人いた彼と同じ服を着ている人に天人を押し付け、また私の方へと歩いてやって来た

「暇してるんでィ。今からちょっと付き合いなせェ。」
「は?」
「んなすっとボケた顔してないで、黙ってついて来なせェ。」
「え、は、何で?て、ちょっ、ひっぱらないでくださいー!!」

ゆゆゆ誘拐犯!!!
助けて銀さあああああん!!!!!


トラブル発生
(う、うちには身代金を払うお金さえな、無いんだからな!)

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