これからのこと


目が覚めたらそこは見慣れたグリフィンドール寮の自室で、同室のメリーとティーナに「おはよう」と言うんだ。そしていつも袖を通す制服に着替えたら階段を下りて、談話室へと行こう。そこでも同じ寮生の友人に「おはよう」を言って、朝食をとりに大広間へ向かうの。それから私は、いつもみたいに勉強をして、友達と他愛のない話をして笑うんだ。そんな何1つ変わらない私の日常

そんな毎日がこれからもずっと続くんだと思ってた


目を開けばそこは見慣れた天井なんかじゃなくて、何処か懐かしい和風部屋。此処は何処で、私あれからどうなったんだっけ?なんて思いながら気だるい身体に鞭を入れて起き上がった。不意にあの猫に引っ掻かれた手を見れば、それは丁寧に包帯に巻かれていた。銀さんが巻いてくれたのかな?そう考えてやっぱり銀さんに会ったのは夢なんかじゃなく、イコールこの訳の分からない場所に来てしまったのも夢じゃないということ

「お、目ぇ覚ましたか。」

そう言ったのは銀さんで、開けた襖から顔を覗かした。開けられた襖の先を見れば、何となく事務所の様な所で、此処が銀さんの言っていた万事屋なのだろうか…

「どっか痛いとことか、気持ち悪ィとことかねぇか?」
「…ないです。その、助けてくれてありがとうございました。あとこれも…」

そう言って私は包帯に巻かれた右手を軽く上げた。それを見て銀さんは「良いってことよ。」と言ってどっかりと布団の隣に腰を下した

「ったく、お前はもうあんな危ないマネすんじゃねぇぞ?」
「本当、申し訳ないです…。」
「まぁな、魔法に憧れるその気持ちも分かるぞ?俺だって何度キキになりたいと思ったことか。」  
「はぁ…。」
「ごっこすんのも悪くねぇけどよ、ちゃんと現実考えて遊べよ?」
「はい…。」

そうやってもし自分が魔法使えたらーなんて話をする銀さん。いや、私本当にその魔法が使える子なんですけど。でも何で急に魔法が使えなくなったんだろ?もしかして私が此処にいることと何か理由があるのかな……そして、そもそも…此処は私のいた時代…世界なのだろうか…銀さんと出会う前に見てきた風景に人間なのかなと疑ってしまう様な人々、空を飛び交う船にUFO…

「あの…銀さん…。」
「んぁ?」
「今からちょっと変なこと聞いても良いですか?」

私は確かめなくちゃならない。真実を知るのは怖いけど、知らないときっと前に進めないから。自分の身に起こったことを、ちゃんと知らないと。私はぐっと両手を握って、やはりやる気なさ気な、銀さんと目を合わせた

「銀さん、今って西暦…いや、何時代ですか?」
「…江戸時代…だけど…?」

それが今更どうした?なんて聞かなくても銀さんの目が物語っていた。江戸時代…今から100年以上も前の時代…ということはタイムスリップ…いや

「銀さん。私、銀さんに会う前に空を飛んでる船や、動物の顔をした人たちに会ったんです…彼らは一体…何なんですか?」
「何お前、天人も知んねぇの?」
「天人?」

銀さんが話すには、天人とはやっぱり異星人のことらしい。それから攘夷戦争が地球人と天人との間に起こったこと、しかし天人の絶大な力を前にして、天人の侵略をあっさり受け入れ開国の道を辿った幕府のこと。今ではすっかり天人が江戸の町を我が物顔で闊歩しているという話を聞かせてくれた。それから推測するに私の身に起こったこと。これは、時空間移動と異空間移動だと判断できる。時空間だけならまだしも…異空間もだなんて……そんな。どうしよう…私、空間魔法の勉強なんてしたことないし、そもそも今の私には魔法だって使えない、帰り方も分からない…。もしかしたら…もしかしたら、ことの事態に気付いたダンブルドア校長先生が迎えに来てくれるかもしれない…だけどそれも確実じゃない…どうしよう

「しかし天人のことも知らないなんて、どんな田舎から出てきたんだ?」
「…あ、いや…私は…
「良かった、目が覚めたんですね。」

素直に自分の身に起こったことを話そうか。そう、私がまごついていた時にタイミング良く部屋に入ってきたのはメガネの少年

「お水を持ってきたんですけど飲めますか?」
「はい。ありがとうございます。」

私は眼鏡の彼から手渡された水をコクリと一口飲みこんだ。そうしたら何だかぐるぐる色んなことを考えていた頭がスッと冴えて、とりあえずこうなった原因や何で魔法が使えないかって考えるのを止めてみることにしてみた。今はこれからどうするかという、目先のことを最初に考えてみることにした


これからのこと
(生きるためには、しっかりしないと)

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