銀の色


本当、私の夢にしてはリアルだなーなんて歩きながらポツリと言葉にした。だって歩いてるっていうこの感触も少し肌寒いなんていう感覚も、何もかもがリアルすぎるんだもん。夢ってそういう感覚関係のものって無いんじゃなかったっけ?あー何だか嫌な予感…私のこういう嫌な予感って当たるから厄介なんだ…

気がつけば雨はすっかりあがっていた


5分程、歩いていたら建物がたくさん並ぶ住宅街の様な場所に出てきた。やっぱりそこもレトロな感じで、だけどそこは江戸時代ってわけでもなく、その外観にはミスマッチなコンビニやパチンコなどといった現代的な建物もいくつか並んでいた

「んーまだ目も覚めるような気配もないし。どうしたものか……あ、猫だ。」

少しだけ歩き疲れて途方に暮れていると、右側の裏路地に真っ白な猫がいた。この闇には似合わないほど真っ白な綺麗な猫。何だか無償にその猫に触りたくなって、私は「おいで。」と手を差し伸ばした。どうやらその猫は飼い猫なのか、ただ単に人懐っこいだけなのか、私が手招きしただけで、その手に擦り寄るようにして近寄ってきた。何だコイツ、可愛いじゃないか。ほーれほれと頭を撫でれば、猫は気持ち良いと言う様に一声鳴いた

「よーしよしよし。お前、本当に可愛いねぇ。」
「なぁーぅ。」

それから私は行儀悪くも地面に座り込んで、大人しくくるまっている猫をわっしゃわっしゃと撫でた。だけど猫は急に思い立ったかの様に立ち上がると、タッと路地の中へと走り出してしまう

「へ?ちょ、何処行くの!?」

その行き成りの行動に驚きながらも、何故か私は猫に続いて立ち上がり、急いで猫の後を追っていた


「あれ…、見失っちゃった?」

20階建てくらいの高いビルの屋上。そこまで来た所で真っ白な姿を見失ってしまった。しっかり付いてきたと思ったのにな。キョロキョロ見渡してもどうにも猫は見つからない。仕方がないと諦めようとした時

「なぁーぅ。」

それは聞き求めていたあの猫の声。どうやら自分のいる反対側から聞こえてくるらしい。だけどその声に答えるように聞こえてくる声がもう1つあって

「何、お前また来たの?もう餌なんて無いから。」

あれ?誰か他の人がいる?ひょこっと覗きこめばそこには1人の男の人

「っちょ、白饅頭っ!懐に顔を突っ込むな!銀さんそっちの気は無いから!」
「んなぁー!」

餌を求めて懐に顔を埋める猫と、それを焦って止めさせようとする銀髪の男性。そんな彼が動く度にその銀の色が夜のネオンに反射して、キラキラ光って見えた。

「綺麗…。」


銀の色
(それが凄く綺麗だと思った)

prev next

[back]